聞き手・岸善樹
ベートーベンの交響曲第9番は、第4楽章で「抱き合おう」と高らかに歌い上げる。日本では年末恒例のプログラムだが、コロナに加えてロシアのウクライナ侵攻に見舞われた今年、この「歓喜の歌」をどう歌い、どう聴くのか。音楽学者の岡田暁生さん(62)は「こういう時代だからこそ、新しい表現が可能なはずだ」と訴える。
――今年の第九は、どんな気分で聴くことになるのでしょうか。
「第九は管弦楽と合唱が一体になって、人類愛を歌い上げます。この規模や熱は第九でしかあり得ない。みんなが肩を組んで進んでいけば、より良い社会が生まれる。そう思わせるような交響曲です。でも今年は特に、そう素直には受け取れません」
――なぜでしょう。
「コロナであらわになった近…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル