午前2時半過ぎ。きらめく星空の下で、福島県いわき市の刺し網漁師・新妻和夫さん(70)は久之浜漁港を出港し、30分ほど船を走らせた。漁船の照明が、自らの船体を暗闇の海に浮かび上がらせる。前日に仕掛けた網を一人、黙々と引きあげた。
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あの事故が起こるまで東京電力福島第一原発周辺は「いい漁場だった」。今も原発から10キロ以内の漁は行っていない。「基準を超える魚がかかるのも嫌だし、みんなできるだけ近づかないね」
福島沿岸の漁師たちは震災翌年の6月から漁を再開。検査によって安全性を証明するデータを積み上げ、水揚げできる魚種も徐々に増やしてきた。「ここまで半歩ずつ、1歩ずつそれぞれが進んできた」(新妻さん)
今年4月、政府は原発の汚染水を浄化処理して海に流す方針を決めた。「これから続く後継者も不安を持つ」と新妻さん。決定に対し風評被害を懸念し、福島県漁連だけでなく、全国漁業協同組合連合会も反対している。
新妻さんは「安全だと言われると信じるしかない。安心の担保がある程度きっちりしないのでは、反対とと言うしかないよね」。複雑な心境を漏らした。(福留庸友)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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