台風15号の災禍に苦しむ花き農家を支えようと、全国の農家や仲卸、生花店など業界を挙げた支援が広がっている。千葉県南房総市では28日、関東一の規模を誇るカーネーション団地に約50人が集結。ハウス内に散乱した屋根ガラスの破片を運び出した。2ヘクタール余りある団地ではハウス被害が9割に及び、3週間がたつ今も手つかずの施設が多い。農家は過酷な現実に直面しながらも、各方面から届く支援を力に「花でお返ししたい」と前を向く。
「母の日まで続く出荷開始が目前だった。今年は過去最高といえる出来だったのに」。カーネーションを年間50万本出荷する岩田秀一さん(42)は、被害の深刻さに心の整理をつけられないでいる。
ハウスのガラス7000枚のうち9割が破損。苗も全滅し、代替資材も調達のめどが立たない。「再建費は数千万円。みんな不安でいっぱいだ」と明かす。
自力では手の施しようがない惨状を、岩田さんらはインターネット交流サイト(SNS)で訴えた。苦境を知り立ち上がったのが全国の仲間。28日は関東地方や福島、新潟、静岡、香川県などから集まり、屋根からガラスを落とし、ほうきで集めて籠に詰め込む作業を繰り返した。
「以前助けてもらった分、今度は自分たちが力になる」と話すのは、群馬県藤岡市でシンビジウムを生産する関根洋一さん(50)。2014年に大雪被害に見舞われた際、今回被災した農家が復旧を手伝いに来てくれた。「恩返しなんてことじゃない。当然のことだ」と力を込める。
農家に卸、生花店、デザイナーなどと、労力や資材提供、募金の支援も広がる。東京都内の仲卸・京橋花きの藤井大専務は「農家のSOSに応えるのは当然。花業界は生産から小売りと深くつながっていて行動も早い」と話す。
各方面からの支援に、岩田さんは驚きながらも感謝する。「花の業界は熱い方ばかり。これだけ支えてもらったら、やめるとはいえない。必ず花でお返しする」と語る。
日本農業新聞
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