四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転を差し止めた昨年1月の広島高裁の仮処分決定を不服として四電が申し立てた異議審で、同高裁(横溝邦彦裁判長)は18日、異議を認め、仮処分を取り消す決定をした。
3号機はテロ対策施設の整備などで停止中。仮処分が取り消されると直ちに法的拘束力がなくなるため、四電は、10月末にも運転を再開したい考えだ。
仮処分を申し立てていたのは、伊方原発から約50キロ圏内にある瀬戸内海の島の住民3人。
異議審の主な争点は、四電が想定した地震規模と、火山のリスク評価が適切かどうかだった。
地震について、住民側は原発近くに国内最大規模の活断層「中央構造線断層帯」に関連する活断層が存在する可能性が高いとし、四電の調査を不十分だと主張。2016年の再稼働を認めた原子力規制委員会の判断を「過誤ないし欠落があった」とした。
これに対し、四電側は調査の結果「活断層はない」と反論し、地震規模の設定は適切で、原子力規制委の判断にも誤りはないと主張した。
火山については、原発への火山の影響の評価方法をまとめた国の「火山ガイド」の合理性や、原発から約130キロ離れた阿蘇山(熊本県)でどの程度の噴火を想定すべきかが焦点になった。
住民側は、現在の火山学の水準では噴火の時期や規模の正確な予測は困難だとして、噴火の規模は「過去最大」で考えるべきだと主張。火山ガイドは噴火の中長期的な予測が可能であることを前提にしている点で不合理だと強調した。
これに対し、四電は現在の阿蘇山は大規模な噴火が起こるような状態ではないと主張し、火山ガイドは火山学的な根拠があり、不合理ではないと反論した。
昨年1月の広島高裁決定は、地震規模の評価について四電の調査が不十分としたうえ、規制委の判断も「過誤・欠落がある」とした。火山評価についても、四電の想定は過小だと指摘し、差し止めの仮処分を決定した。
本訴にあたる差し止めをめぐる訴訟は、住民側が17年12月に山口地裁岩国支部に提訴し、現在係争中。(西晃奈)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル