ジャニーズ事務所の創業者・故ジャニー喜多川氏による元少年たちへの性加害問題が浮き彫りにしたのは、被害者が声を上げることの困難さでもあった。
自身も性被害を受けたジャーナリストの伊藤詩織さんは、誹謗(ひぼう)や脅迫にさらされながら、性暴力の問題を追及してきた。被害者の声を封じないためにはどうすればいいのか。被害者の救済とは。伊藤さんに話を聞いた。
――今回のジャニーズ事務所における性加害問題や事務所の対応について、どう見られましたか。
「芸能界だけでなく、教育機関、会社でも、ハラスメントや暴力は、組織におけるパワーのバランスの崩れから起きると思います。では、ゆがんだ権力構造に、どうやってメスを入れていくか。その意味では、ジャニーズ事務所の新社長に東山紀之さんが就任されましたが、かつてハラスメントをした疑いについて質問され、『自分は覚えていない』というような人物を組織のトップに置くことは、真摯(しんし)な対応とは思えませんでした」
――今回の性加害問題では、多くの被害者が長く声を上げられず、声を上げた後も報じたメディアは多くありませんでした。これは、伊藤さん自身も経験されたことです。
「私が自分の性被害について記者会見をした2017年と、23年の今では、性暴力に対する目線やメディアの対応は変わったところもあると思います。私が最初に会見をしたときは、なぜ被害を受けた人間が顔と名前を出して話をするのかと、好奇の目を向ける記者もいました。私の服装について書いた新聞もあったのです」
「会見をしたのは、『#MeToo』運動が世界的なうねりになる直前のことでした。知り合いの記者に話を聞くと、編集局の男性デスクの理解が得られず記事を出せなかった、と。性暴力は重大な犯罪であり、人の心や体を傷つけるものであるにもかかわらず、軽く見られていたのではないかと考えています」
「ジャニー氏による性加害問題についても、これまで様々なチャンスがあったにもかかわらず沈黙を保ち、英BBCが今年3月に問題を報じた後も、すぐ後追いをしようとしなかった。日本の大手メディアの大きな組織的問題だと思います」
――構造的な問題がある、と。
「背景にあるのは、記者クラ…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル