仙台市郊外の国道沿い。4年前に廃業し、閉鎖された小さな工場がある。
看板の社名は「豊洋電子精機」、1974年創業。電子回路と精密機械を組み合わせた「メカトロニクス」と呼ばれる技術で、高精度の計測器や自動制御装置を手がけてきた。
松下電器産業(現パナソニックホールディングス)、アルプス電気(現アルプスアルパイン)、キヤノン、リコー、中部電力、東京電力……。取引先リストには、大企業や関連会社が並ぶ。
ここでしか作れない機器が、いくつもあった。日本のモノづくりの一端を担ってきたのは、一人の老技術者だ。
元社長の豊川光正さん。今年87歳になった。
実は、彼にはもう一つの名前がある。
仕事仲間にはずっと伏せてきた。任左彬。朝鮮語でイム・ジャビンと読む。
「北朝鮮に行くのは待て」 運命の分かれ道に
戦前に朝鮮半島から渡ってき…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル