渡辺松雄
佐賀県唐津市の「虹の松原」内の県道で2019年7月、倒れた松と車が衝突し、小学5年の男児(当時11)が亡くなった事故で、県がその6年半前、この松の伐採を申請しながら市教育委員会が許可しなかったことが分かった。男児の母親(38)は「切っていたら事故はなかった」と指摘している。
事故は19年7月20日深夜、大雨の中で発生。根元から6メートルのところで折れた松と母親が運転する軽乗用車が衝突し、助手席の男児が亡くなった。
県道を管理する県唐津土木事務所によると、この6年半前の12年12月、事故の原因となった松を含む26本について、「道路上空を横断するような形状で、自重による倒木の恐れがある」と市教委に伐採を申請した。海岸線に沿って松林が虹のような弧を描く虹の松原は国の特別名勝で、伐採には市教委の許可が必要となる。
市教委は13年6月、「しばらくは松の生育を観察しながら対応したい」として申請を不許可に。土木事務所はこの申請前にも、車の通行に支障があるとして12年9月までに19本を伐採しており、市教委は「伐採終了の報告から時間が経過していない」と不許可の理由を説明したという。
市教委生涯学習文化財課の中山誠課長は当時の伐採基準について、「道路から高さ4メートル以内の松を切っていた」と説明し、倒れた松は「その基準と違っていた」と話す。土木事務所によると、道路からの高さは5メートル超だったとみられる。
19年の事故後、土木事務所は危険と判断した松数百本の伐採を申請。市教委は樹木医の診断結果を踏まえ、特別名勝の範囲内にある325本のうち、「病害虫の被害があり、早急に伐採するべきだ」と県が判断した13本に限って伐採した。
峰達郎市長は19年8月末の記者会見で、「安全性は保ちつつ、景観のため、できる限り残せる部分は残していきたい」と発言していた。
男児の母親は取材に対し、「事故が起きるまでの6年半、放置された。怒りしかない」と話している。(渡辺松雄)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル