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東京都内に住む岡崎英之介君(13)は、親の転勤のため、ドイツのデュッセルドルフで2歳から8歳まで過ごした。通っていた日本人学校では、日本の本がたくさん並んだ図書室がお気に入りだった。
ところが小学2年で帰国して地元の公立小学校に転入すると、学校に行くのがつらくなった。
納得できないルールが多すぎたからだ。
休み時間は屋外、筆箱は箱形
例えば、休み時間。低学年の子は全員、屋外の運動場で遊ばなければならなかった。英之介君は図書室で本を読みたかった。
母親(44)は学校を訪ねて「なぜ休み時間に、図書室に行ったらダメなのですか」と聞いた。「学年の決まりですから」という答えだった。「なぜ、筆箱は袋のタイプはダメで、箱型でないといけないのでしょう」と聞いたときも同じ「学年の決まり」だった。
5年生の夏休み明け、クラスメートにからかわれたことがきっかけで、学校に全く行けなくなった。
兄の淳之介君(15)も帰国後、学校生活が苦痛だった。不登校にはならなかったものの、自宅から目と鼻の先の学校を遠く感じた。
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小学校は「空気を読まず、乗り切った」が、受験して進学した私立中学校にもなじめなかった。
彼が昨春から通うのが、通信制の「N高等学校」だ。
厳しい校則も制服の義務もなし
N高は2016年に開校した。「ネットによる映像授業と個別指導」を掲げ、1万2千人が在籍する。「ネットコース」だけでなく、全国13カ所の校舎への「通学コース」もある。淳之介君は週5回の通学コースを選択した。
厳しい校則も制服を着る義務もない。先生が特性にあわせた授業をしてくれるところが良いという。
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英之介君も昨春、開校したばかりの「N中等部」に入学した。週3回楽しく通う。今は、読書よりプログラミングに夢中だ。
兄弟は決して特別な存在ではない。文部科学省の調査で、日本の小中学校で不登校になっている児童・生徒は2018年度、16万人を超えた。前年度比で2万人も増え、過去最多だ。
兄弟の話を聞きながら、大分県別府市の立命館アジア太平洋大学(APU)に出口治明学長を訪ねたときの会話を思い出した。
約90カ国の留学生が学ぶなど、多様性を重視する大学だ。学長室には、全国から中高生の保護者が相談にやってくる。一番多いのが不登校の相談だという。
「子どもがおかしいんではないんです。偏差値教育や、型にはまった教育になじめない子どもが悲鳴を上げている。感受性が強い、カナリアのような子どもたちです。無理に通わなくていい。検定試験もあるし、通信制の高校もある」
出口さんがそう伝えると、少し安心した顔をして帰路につくという。
出口さんは、文科省が「主体的・対話的で深い学び」を推進する一方、多くの学校現場で理由がよくわからない校則が存在することに怒りを覚える。
「生徒から『この校則の根拠は何ですか』と聞かれて先生が答えられなかったら、それは『パワハラ』だと思うべきです。そんな現場で、『主体的・対話的で深い学び』ができるのでしょうか」
画一的な教育を変えるには何が必要なのでしょう。記事後半では、不登校を乗り越えた日本の家族や、教科書も試験もない米国の学校を例に考えます
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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