スポーツ庁が2021年度に、一部自治体で中学校の運動部活動の地域移行を先行実施したところ、対象となった全国102自治体のうち半数近くの45自治体で、教員が指導を担っていたことがわかった。部活の地域移行は、教員の負担軽減を目的に来春から本格的に始まる予定だが、実際に負担が減るかは未知数だ。
部活の地域移行は、スポーツ庁と文化庁の有識者会議がそれぞれ、今夏に提言をまとめた。23~25年度を「改革集中期間」とし、公立中学校の休日の指導を、民間クラブなどに託していく方針だ。
スポーツ庁はこれに先立ち、21年度に102自治体の一部の中学校で地域移行を実施した。この自治体に同庁が指導者の属性を聞いたところ(複数回答可)、最も多かったのが、総合型地域スポーツクラブや競技団体などの地域指導者(71自治体)。2番目に多かったのが教員(45自治体)だった。続いて社会人(39自治体)、大学生(16自治体)だった。教員については原則、希望者が指導し、1人で担当したり、地域指導者らと一緒に担当したりする場合もあった。
指導者に占める教員の割合を自治体の規模別でみると、政令指定市では11%、市区では21%、町村部では20%だった。
また、利用している施設について聞いたところ(複数回答可)、93自治体が学校施設と回答。公共施設の利用は37自治体だった。学校施設の利用について、同庁の担当者は「鍵の受け渡しなどで、教員の負担が残っているところはある」と話す。
各自治体の報告書でも、課題が浮かび上がった。山形県の鮭川村立鮭川中では、野球部など三つの部活で休日の活動を地域移行した。指導者は地域指導者3人と教員2人が担当。課題を指摘する意見として、「(一部を教員が担っているため)部活動の延長と捉えている生徒・保護者が多い」「大会要項に教員の引率が参加条件として記載されているものがある」などがあった。
鳥取県境港市の報告書は、指導者の確保が大きな課題だとした。毎週時間がとれて、青少年の健全育成につながる指導ができる指導者はそう多くないと指摘。現職の教員が休日の指導員を担当する形を「とらざるを得ないのが実情」だとした。
石川県能美市の報告書は「教員がいないと使用できない学校施設がある」とし、場所の確保を課題として挙げた。栃木県矢板市の報告書は「生徒指導・安全管理面で教員の力が必要になる場面がどうしてもあり、教員が離れきれない」と指摘した。(山本知佳)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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