低賃金労働に慣れきった社会通用しない 小熊英二さんが考える選択肢

 日本社会の過去と現在の姿を踏まえ、「8がけ社会」の未来をどう描くか。歴史社会学者の小熊英二さんに聞いた。

 ――労働力不足が問題になっています。

 日本では最近の現象です。敗戦後は人口過剰の方が問題でしたし、1970年代までは地方の農林自営業から労働力が供給されていました。また女性・高齢者・若者が家計補助の縁辺労働力と位置づけられ、各種の低賃金労働を担っていた。

 欧米諸国はすでに20世紀半ばには農村からの労働力供給が期待できず、移民を入れていた。日本は、特定の産業には90年代から技能実習生を入れましたが、全体的な労働力不足が深刻化したのは2010年代以降です。

連載8がけ社会

高齢化がさらに進む2040年。社会を支える働き手はますます必要になるのに、現役世代は今の8割になる「8がけ社会」がやってきます。今までの「当たり前」が通用しなくなる未来を私たちはどう生きるべきでしょうか。専門家の力も借りながら、解決に向けた糸口を考えます。

 ――人口過剰の方が問題だったとは意外です。

 50年代前半までは経済復興も難航し、いまの年間新生児数の4倍近い「団塊の世代」を労働市場に吸収できるのかも懸念されていました。しかし、これは高度経済成長で自然に解消した。

 その後に類似の問題がおきたのは「団塊ジュニア」、いわゆる「ロスジェネ」でしょう。この世代も前後の世代より3割ほど多い。

 本来なら、この世代を労働市場に吸収するために良質な雇用を増やさねばならなかった。しかし政府が行った施策は、大学の設立規制緩和と定員増加で、大学に彼らを収容したことだけだったといえます。

 60年代と違って経済が成長せず、この世代の非正規労働者の割合が高まった。その後遺症をこの年代は引きずっている。

記事の後半では、小熊英二さんに、働き手が今の8割になる未来への選択肢を聞きます。数十年前から推計されていた人口減少に効果的な手を打てなかった理由についても考えます。

 いずれにせよ、21世紀初頭…

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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