役柄の幅広さは折り紙つきだ。NHK朝の連続テレビ小説「半分、青い。」でさわやかな好青年を演じれば、映画「億男」では金に翻弄(ほんろう)される男を通じて「金とは何か? 幸福とは何か?」を問うた。
8日公開の「ひとよ」で演じたのはフリーライターの稲村雄二。長髪に無精ヒゲをたくわえ、やさぐれ感を醸し出した。雄二は一家の次男。母こはるは、3人兄妹を家庭内暴力から守るために父親を殺害。母は刑に服し、15年後に戻ってくる。
脚本を読んで、一筋縄ではいかない家族の再生の物語に一気にひきこまれたという。「家族ってなんでこうも家族から逃れられないのだろうと感じた。よくいえば絆だし、悪くいえば呪縛、それは本質的には同じもの。不思議な集合体だと思った」
監督は白石和彌。今乗りに乗っている才匠だ。「凶悪」「孤狼の血」などの代表作から察するに怒号の飛び交う現場を想像したが、「静かに淡々と進んでいって、作品とのギャップに驚いた。職人気質が漂い、余計な力、無駄なエネルギーがいらない現場でした」
演じた雄二は家族と距離を置き、心の中に闇を抱える。「僕の場合は役をやると決めたら、その役を演じるために最善のアプローチって何だろうと考える。今回は共演者の芝居にのっかっていった」
母親役の田中裕子は圧倒的な存…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル