黒い雨を浴びた私たちを被爆者と認めて――。国の援護対象外の原告の訴えを全面的に認めた広島地裁判決に対し、国と広島県、広島市は12日に控訴した。援護拡大を視野に再検証する方針も示されたが、原告の人々は高齢化が進み、病を抱える。「もう、時間がない」。悲痛な叫びがあがる。
「黒い雨」による健康被害の不安を抱えるのは、訴訟の原告だけではない。
7月16日、爆心地から約18キロ離れた広島市安佐北区の安佐公民館。「黒い雨体験者の健康不安相談会」が開かれ、住民7人が訪れた。「着とったシャツが真っ黒になった」。医師らとの面談を終えた男性(84)はつぶやいた。がんを患ったが、当時いた場所は援護の対象区域の外だったという。「腹立つよ。ほんまに降ったんじゃけえ」
この相談会は、国の委託を受けた市と広島県が2013年10月に始めた。市によると、昨年度末までに援護区域外にいる延べ832人が相談に訪れたという。
広島県原爆被害者団体協議会(佐久間邦彦理事長)の相談所には、7月29日の広島地裁判決後、黒い雨の被害を訴える約10人から問い合わせがあったという。
黒い雨を浴びたのに、援護の枠外にいる人はどれくらいいるのか。
松井一実・広島市長は12日の記者会見で「爆心地から30キロ圏内で黒い雨を浴びた人は、ざっくりした推定で1万3千~1万4千人いるはず」との見方を示した。市幹部によると、すでに死去した人を除いても、数千人規模の当事者がいると推定されるという。(宮崎園子)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル