体の一部になる鞄 足ひきずる暮らし、NYでひらめいた

 手袋会社「スワニー」(香川県東かがわ市)の相談役を務める三好鋭郎(えつお)さん(80)が13日、親子向けの科学実験教室で講演をした。右足が不自由なことから思いついた障害者に優しいかばん「スワニーバッグ」の開発秘話を披露し、「障害者に愛されるモノは健常者にも喜ばれる」と語った。

 講演は市民団体「さぬきニコニコひろば」が主催し、さぬき市役所で開かれた。親子連れら約100人が聴き入った。

 三好さんは生後すぐ高熱から小児まひに。右足に力が入らず、足を引きずって暮らさざるを得なかった。高校を卒業後、父の冨夫さんが創業した手袋会社に入社。1964年、欧米に販路を広げようとニューヨークに渡った際に見たのが、体ごともたれられる車輪付きの大きなトランクだ。

 日本のかばんは手に提げるものが主流だった。車輪で自由に移動できるトランクは、かばんでありながら体を支える杖の代わりにもなる、とひらめいた。

 体重を載せても壊れず、荷物もしっかり入る。そんな利便性を実現するため、支柱の位置や持ち手の形を工夫し、97年に完成したのがスワニーバッグ。商品のタグに体をかばんに預けた自らの写真を印刷し、「もたれっ放しで歩ける」「杖の倍は楽」とPRした。

 当初こそ売り上げが苦戦したものの、やがて年間10万個が売れ、社全体の売り上げの25%を占めるようになった。障害者だけでなく元気な人にも愛用されるようになり、「もう体の一部」「手ぶらで歩くより楽」といった声が年に数千通も寄せられるという。

 いまも障害者の思いに寄り添ったかばんや車いすの開発に取り組む。「アイデアを思いついたのはハンディがきっかけ。ニーズは障害がある人でないとわからない。自分のほしいものを、あきらめずに追い求めることが必要」と話した。

 スワニーバッグなどの問い合わせはスワニー(0879・25・0252)へ。(江湖良二)


Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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