晴れた冬空の下、チャイムとともに校庭に飛び出してきた子どもたちが向かった先にあるのは、白いロープ。地面から校舎の2階まで斜めに張ってあり、バトンが通されている。
子どもたちが順番に投げるとバトンはするするとロープを上る。長さは27メートル。低学年の子は真ん中くらいまでしか届かないが、6年生の男子が投げると勢いよく校舎の壁に当たり、「お~」と歓声が上がった。子どもたちが「ロケット」と呼ぶ人気の遊び道具だ。
全国体力テストで長年上位に位置する茨城県。那珂市立瓜連小学校では、20分ある中休みと給食後の昼休みには、体調不良をのぞくすべての児童に外で遊ぶよう指導している。ロケットは楽しみながら投力を鍛えられるようにという工夫だ。会沢凌君(6年)は「外で遊ぶと嫌なことも忘れて発散できる」と話す。
県教育委員会によると、1998年から公立の小中高全校で、体力向上のための具体的な計画を作っている。県独自の取り組みだ。2011年からは「5段階ある体力テストで上位2段階の割合を8割に」など、学校ごとに目標値を設けたプランを作る。持久走の結果が悪かった学校は授業の合間の休み時間にランニングを採り入れるなど、具体的な改善策を盛り込む。全国的にも珍しく、他県からの視察も多いという。
背景には何があるのか。県教委や現場の教員らが声をそろえるのが、県独自の体力テストの存在だ。県教委によると、全国に先駆けて1967年に開始。遅くとも98年からは全公立小中高の全学年を対象にした。
県内の小中学校で20年間教員をし、県教委の指導主事も務めた流通経済大学スポーツ健康科学部の柴田一浩教授(体育科教育学)は「国の体力テストの対象は小5と中2だけ。長年、全学年でテストをしてきたことで、教員や保護者、子どもらの意識が高い」と語る。98年から全校で計画作りを始めたのも、県独自で行っていたテストで体力低下の傾向が見られたことがきっかけだったという。
柴田教授は、平地が多く運動場…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル