新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大が続く中、健康不安の高まりとともに、体温計の需給が逼迫(ひっぱく)している。薬局や家電量販店では品不足が続き、国内メーカーは生産量を増やして対応。企業の間では、画像で発熱者を選別することができる「赤外線サーモグラフィカメラ」を導入する動きも出てきている。(山本考志)
「2月以降、マスクやアルコール消毒液だけでなく、体温計の入荷も少なくなっている」
ドラッグストア大手のキリン堂の担当者は、体温計の在庫状況についてこう説明する。家電量販店大手のエディオンも、「店頭での体温計の売れ行きは例年の3~5倍で、欠品している商品が多い」(担当者)という。
厚生労働省は、新型コロナウイルス感染症についての相談や受診の目安を「風邪の症状や37・5度以上の発熱が4日以上続く」などと規定。これを受け、企業や学校などで出社・登校前の検温を求める動きが広がり、体温計の需要は高まっている。
供給側の電機メーカーは対応に奔走する。テルモは2月以降、中国浙江省の生産拠点で増産を開始。タニタでは台湾の製造受託企業への注文を増やしたが、3月上旬から部品不足で生産がストップしており、出荷の再開は6月以降になる見込みだ。
オムロンでも注文が例年の2倍以上に伸びているが、部品不足で3月の生産量は前年同月比の1・5倍にとどまっており、同社広報は「部品を調達できた製品から優先的に生産を進め、何とか需要に応えていきたい」と話す。
一方、企業の工場や施設では、体表面の温度を画面に表示し、発熱者を選定できる赤外線サーモグラフィカメラを導入する動きも出てきた。
赤外線サーモグラフィカメラを手がける国内大手の日本アビオニクスでは、2月以降に注文が急増。製品の価格帯は約50万~200万円と高額だが、どの製品にも注文が相次いでおり、福島県の製造工場を24時間態勢でフル稼働し、生産量を3倍に増やしている。
同社広報は「これまでは空港の検疫施設向けの注文が大半だったが、新型コロナの影響で、一般企業からの工場やアミューズメント施設向けの注文が急増した。従業員や利用者への感染を防ごうという意識が高まっている」と話している。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース