本業の鉄道事業は万年赤字、売り上げの8割が煎餅(せんべい)販売などの食品事業という千葉県銚子市のローカル線、銚子電鉄が、コロナ禍で再び崖っぷちに立たされている。「今の状態が半年続いたら破産」と話す竹本勝紀社長(58)だが、それでも楽観的な姿勢を失わない。自信の源流は15年前の「奇跡」にあった。
たけもと・かつのり 1962年生まれ。税理士。座右の銘は「疾風勁草(けいそう)」。ダジャレを愛する「ダジャラー」でもある。
2006年11月のある夜、当時経理課長補佐だった山崎勝哉さん(55)=現経理課長=は、ぬれ煎餅の飛び込み営業から疲れ果てて本社に戻った。会社は10年ほど前からぬれ煎餅を製造販売。「あと数日で資金ショートを起こしてしまう。なにかしなければ」と思い詰めて始めた「行商」だった。同僚とともに見知らぬ会社事務所に飛び込んでは、「ぬれ煎餅を買ってください」と頭を下げて回る日々だった。
当時、会社は前社長の1億円を超す業務上横領に揺れていた。行政の補助金が打ち切られた上、国からは老朽化した線路や踏切の改修を命じられ、3カ月以内にできなければ運行停止が待っていた。その費用は約5千万円。さらに1カ月後に迫った電車の法定検査にも1千万円が必要だった。いずれも、1カ月の運賃収入が900万円の赤字鉄道が背負える金額ではなかった。
行商の合間に考え込んでしまうこともあった。「私たちが思うほど銚電は必要とされていないのだろうか」。そんな迷いを振り切るようにこの夜、思いついた言葉を会社のホームページに書き込んだ。
「緊急報告 電車運行維持のためにぬれ煎餅を買ってください!! 電車修理代を稼がなくちゃ、いけないんです」
断末魔からの逆転、そしてまた自転車操業に
当時は顧問税理士だった竹本…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
Leave a Comment