江戸時代の俳人で画家でもあった与謝蕪村(1716~83)が中国唐代の伝説を題材に手がけたふすま絵が、香川県丸亀市の妙法寺にある。この絵には2人の人物が描かれているが、1968年に何者かが1人の顔半分を破り去った。それから半世紀。最新のデジタル技術で複製され、失われた顔がよみがえった。
蕪村は江戸中期に讃岐国(今の香川県)を訪れ、知人だった妙法寺の檀家(だんか)総代の紹介で寺にたびたび滞在した。その際、お礼を込めて6点の絵を残した。寺は「蕪村寺(ぶそんでら)」の別名でも知られている。
寺宝として大切にされていた蕪村の絵が傷つけられたのは68年春のことだ。
被害に遭ったのは、縦197センチ、横139センチのふすま4枚の大作「寒山拾得図(かんざんじっとくず)」。向かって左に巻物を持つ寒山、右にほうきを持つ拾得の2人の詩僧が描かれていたが、寒山の顔の向かって右半分が破られた。さらに拾得の両目には、黒の油性インクで付けまつげのような書き込みがされた。
寺の庭園のソテツを写生し、讃岐時代の蕪村の代表作とされる「蘇鉄図」も、同じインクで落書きされた。
当時住職だった大岡真淳(しんじゅん)さん(85)は「蕪村が描いてくれた絵に、そんなふうにやられて、残念至極でした」とふり返る。警察に被害届を出したが、騒ぎになることをおそれて公表は望まず、報道されなかった。犯人は今も明らかでない。
蕪村が寺に滞在中に描いた6…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル