世界保健機関(WHO)が1980年に天然痘の根絶を宣言してから8日で40年が経過した。過去、幾多の感染症に襲われ、克服してきた人類は今、新型コロナウイルスという難敵と闘っている。新刊本「人類は『パンデミック』をどう生き延びたか」の著者で歴史作家の島崎晋さん(56)は「学ぶべき点はナイチンゲールとニュートンにもあります」と語る。(北野 新太)
紀元前から現在に至る感染症の歴史を追った島崎さんは、コレラ流行下で勃発したクリミア戦争(1853~56年)の戦地の病院で勤務した英国の看護師フローレンス・ナイチンゲールの功績に着目した。「やるべきことは時代を経ても変わらないんだな、と」
「近代看護の母」が指示した感染防止策は「清潔な環境の維持」「太陽光の取り込み」「絶え間ない換気」「密集、低温の回避」。どれも2020年の今に通じる。「手洗い(清潔)、換気、密集回避というのは完全に同じということと、現場の声を聞く重要性を表しています。ナイチンゲールも医療従事者ですから、今の日本も『専門家に意見を聞いてから』の前に、医療従事者の声に耳を傾けないと現場の真実は分からないはずです」
緊急事態宣言が発令されている今、ナイチンゲールの教えを守って自宅で過ごす島崎さんの理想の巣ごもり生活は英国のアイザック・ニュートンだ。1665年、ニュートンは流行していたペストを逃れて実家に帰省。木から落ちるリンゴを見て、万有引力の法則を発見したとされる。「大学が休校になったイレギュラーな時期に多くの業績を残した『驚異の年』とも言われています」
14世紀、黒死病と呼ばれたペストによる死者は7500万人とも1億人とも言われている。欧州全土が絶望に包まれた時期の後、新たに生まれた価値観によってルネサンスが興隆した。「今だって、過去を脱却して新しい価値観を生む良い機会だと思うんです。ぶっつけ本番で働き方改革をしているわけですから。例えば、無駄な会議を省いて家庭の時間を大切にしたりする契機に」
歴史を見渡せば、新型コロナウイルスの流行が繰り返される懸念は当然ある。「昔も同じですけど『神が警告を発している』といったロジックで新興宗教が暴走したりする可能性だってあります。アジア人蔑視(べっし)で日本人が海外に行きにくくなるかもしれない。だからこそ、いかにリーダーたちが世界を啓蒙していけるか。今後さらに問われることになると思います」
長期化しそうな現実と向き合うためにも、過去を知るべき時期なのかもしれない。
◆島崎 晋(しまざき・すすむ)1963年6月7日、東京都板橋区生まれ。56歳。立教大文学部史学科卒。歴史雑誌編集者などを経て歴史作家に。著書に「ウラもオモテもわかる哲学と宗教」「眠れなくなるほど面白い図解 孫子の兵法」「ざんねんな日本史」「覇権の歴史を見れば、世界がわかる」など。
報知新聞社
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Source : 国内 – Yahoo!ニュース
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