「しんちゃん」から電話がかかってきた。息子の久々の肉声に、千葉県船橋市の女性(76)は心が浮き立った。
4月11日午前9時ごろ。自宅2階のリビングでひとりテレビを見ていると、固定電話が鳴った。近くの子機を取ると、穏やかな男性の声が聞こえてきた。
「俺、分かる?」
落ち着いた話しぶりに、都内に住む次男(44)の顔が浮かんだ。
「しんちゃん?」
次男との会話はスマホのメッセージがほとんど。久しぶりに電話をもらって、うれしくなった。
「そうそう」
「しんちゃん」は話を続けた。
「荷物、いちごとか送りたいんだけど。今日は家にいる?」
「うーん、夕方ならいるよ。今日は病院だから」
「そうか。わかった」
それだけ言うと、電話は切れた。果物なんて珍しいな。でも、その後は何の連絡もなく、女性もほどなく忘れてしまった。
翌日。出かける支度をしていた午前8時ごろ、また電話が鳴った。
「お母さん?」
昨日と同じ声はすぐ本題に入った。
「おなかを壊してトイレに入…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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