進学や就職、結婚まで――。親の信仰で子どもの人生まで左右させられる宗教虐待。厚生労働省は初めて対応指針をまとめ、全国の自治体に通知した。被害に苦しんできた当事者は、対策への「第一歩」と歓迎するが、残された課題は少なくない。
関東地方に住む旧統一教会の30代の宗教2世は、厚労省が示したガイドラインについて「大きな前進。児童相談所などが踏み込みにくかった宗教的な虐待について、具体的な指針を示してくれた」と評価する。
合同結婚をした両親のもとに生まれた。物心ついたころから教会に行き、地面に生首があるような「地獄」の世界を映画で見せられ、恐怖を植え付けられたという。欲しかったゲームは買ってもらえなかった。
小学校のころは毎朝5時に起こされ、家で教団の教義を音読させられた。「眠いからやりたくない」と言うと、「サタンが入っても知らないよ」と言われたという。
思春期には、異性への興味もあったが、「結婚相手以外との恋愛をしてはいけない」と言われ、気持ちに無理やりブレーキをかけていた。
ガイドラインに照らすと、これらが「虐待」にあたる可能性もあるとわかったが、これまでそれを「虐待」と認識することはなかった。「親がマインドコントロール下にあれば、子どものためと思ってやっていることが虐待にあたる可能性があることに気がつかないし、そういう家庭で育った子どもも気がつきにくい」
この日、野党の聞き取りに対し、自身も合同結婚をし、子どもを育てる親であることを話した。「自分も宗教3世である子どもを持つ親として、考えさせられる内容。このガイドラインを、子どもを持つ信者の親たちにぜひ読んでもらいたい」
宗教2世、ガイドラインは「大きな希望」
東京都内に住む30代の夏野なな(仮名)さん。キリスト教系の宗教団体の熱心な信者だった父親や親族の中で育った。
ただ、夏野さん自身は一度も信じたことはない。
0歳から週3回、日曜日の午前中や平日の夜にある集会への出席を強制された。座ったまま何時間も教義を聞く。
集会中にウトウトしたり、手…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル