無料通信アプリ「LINE(ライン)」の個人情報が利用者への具体的な説明が不十分なまま、中国の関連企業からアクセスできる状態にあった問題で、総務省は19日、LINEに対し、電気通信事業法に基づき、事実関係などを1カ月以内に報告するよう求めたと発表した。政府の個人情報保護委員会も同日、LINEと親会社であるZホールディングス(HD)に個人情報保護法に基づき、報告を求めたことを明らかにした。
総務省は、中国の関連企業で利用者の個人情報にアクセスできるようになっていた詳しい経緯に加え、個人情報や通信の秘密を保護する体制は整っているかどうかや、今回の問題について利用者への説明・周知の状況などについて説明を求めた。報告は来月19日を提出期限とした。
LINEは、電気通信事業法の届け出事業者。同法では通信の秘密は侵してはならないと定めており、一連の問題で、通信内容を他人が知りうる状態になっていなかったかどうかなどを調べる狙いがある。
一方、個人情報保護委員会は19日夜、異例の記者会見を開いた。今後、LINEとZHDが提出した報告書や資料をもとに個人情報保護法違反にあたるかどうか検証し、必要に応じて処分も検討する。委員会によると、報告を求める段階で公表するのは初めてという。
委員会によると、両社について、業務内容や個人情報の取り扱い、情報へのアクセス権限などに関する報告を求めた。両社には、これまで任意で事情を聴いてきたが、社外秘にあたる詳細な資料も必要と判断し、同法に基づいた報告を求めたという。提出期限は23日とした。
同法40条は、個人情報を取り扱う事業者に対し、委員会が事務所へ立ち入り検査したり、事実関係の報告や帳簿書類など資料の提出を求めたりできると定めている。
LINEが保存する個人情報をめぐっては、19日午前に開かれた衆院内閣委員会で、個人情報保護委員会事務局長が、法律上の個人情報に該当するという認識を示した。
LINEは日本国内に保存していた利用者の個人情報について、中国の関連会社の技術者4人がアクセスできるよう設定。さらに、利用者間でメッセージをやりとりできる「トーク」に投稿された全ての画像や動画が、韓国国内のサーバーに保管されていたことも明らかになっている。LINEによると、韓国にある子会社社員がアクセスできる権限を持っていたという。
個人情報保護法では、利用者本人の同意があれば、個人情報を国外の事業者に提供したり、海外からアクセスしたりすることを認めている。LINEはプライバシーポリシー(個人情報保護に関する指針)で、個人情報を第三国へ移転する可能性があると記していたが、利用者に対する説明が不十分だったとして、全面的な見直しを進めている。
松本秀一監視・監督室長は会見で「指針の記載内容だけでなく、利用者にとってわかりやすい内容だったかどうかも確認したい」と述べた。
LINEは海外の関連会社にアクセス権限を与えていた理由について「日々の開発・運営業務上の必要性からアクセスを行っている」と説明し、「外部からの不正アクセスや情報漏洩(ろうえい)は発生していない」とコメントしている。(益田暢子、井上亮、大部俊哉)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル