「ボンジュール」
こんな明るい声であいさつするのは、元パリコレモデルの林マヤさん。かつては東京とパリを行ったり来たりしていたが、2009年に茨城県守谷市に移住した。
駅までバスで約40分の郊外の一軒家に「ダーリン」と呼ぶ夫(笛風呂タオスさん)と住み、タレント、ファッションブランド「MAYAMAYA」の運営、2400平方メートルの畑の作業にいそしむ日々だ。
コロナ禍で首都圏を脱出する人が増えています。移住先として注目を集めるのが茨城県です。その中でも人気エリアの守谷市に、13年前から林マヤさんが住んでいます。借金苦を乗り越え、癒やしを求めて移り住んだ林さんに「茨城ライフ」の神髄を聞きました。
「茨城というと、そんな田舎に行っちゃったのという反応が返ってきますが、守谷駅からつくばエクスプレス(TX)に乗れば、20分ぐらいで北千住駅に着くんですよ。『ポツンと一軒家』のような仙人の暮らしじゃないです」
今は仕事で東京に行くのは週2回ほど。打ち合わせはコロナ禍になってリモートが多くなったので不便さは感じないという。
5LDKの一軒家、家賃は月9万円
1住宅あたりの敷地面積が日本一の茨城県にやってきてマヤさんが驚いたのは、家賃の安さだ。
駐車場が2台分付いた5LDKの一軒家で月9万円。マヤさん夫婦が借りている農地の賃料も安いという。
「移住した当初は、住宅地に近いところで畑を借りたので、肥料が臭い、土ぼこりが飛ぶとか怒られました。地元の人の『だっぺ』『やっぺ』など茨城弁がきつく感じ、怖いなと思ったのですが、よくよく話すとシャイでいい意味でおせっかい。親切な人が多いんです」
茨城県は有数のそばの産地。周囲の畑には、野菜だけでなく、そばも多いという。
「うちが野菜を作りすぎたとき、ご近所におすそ分けすると、お返しにそば畑をやっている人が手作りした『常陸秋そば』をドアノブにかけてくれたこともありました」
守谷市には都内から移住したコミュニティーもあり、若い世代も目立つようになったという。
「地元の人は移住者にあまり干渉しないですが、畑で困ったことがあると農地を借りている地主さんが教えてくれます。繁忙期は近所の人に作業を手伝ってもらったり、私も手伝いに行ったり。とにかく住みやすい街です」
田園に点在するレストラン、パン屋、そば屋
唯一の不満はハイファッションブランドのブティックが一軒もないこと。マヤさんは1980年代、モデルとして活躍。クリスチャン・ディオール、KENZO、ジャンポール・ゴルチエなど多くのブランドのパリコレクションに出演した。
「近所にシマムラなどはあるのですが、モデルをやっていた私としてはときめく服がないのは寂しい。週2回、東京に行って流行をチェックするのも楽しみの一つです。そんな思いから自分でデザインした服、かばんなどブランドを立ち上げ、ネット通販で店をやっています」
土地の広い守谷市には田園の中にイタリアの小さな村のようにつくられたおしゃれなレストランやパン屋、おいしいそば屋などが点在しており、生活に不便さはないと言い切る。
「東京から戻ってくると、田んぼからカエルの鳴き声がゲコゲコと聞こえ、自然に癒やされます。やさしい気持ちになって元気になれるんですよ」
電気、ガス、水道が止まった
そんな明るいマヤさんも、茨城県に移住する前、うつ状態になり、家から一歩もでられない「ひきこもり」になった過去がある。
マヤさんがパリコレでモデルをしていた当時は、ランウェーを1回歩くだけで100万円ものギャラを稼ぐ人もいる時代だった。その中にいたことで、金銭感覚がまひしていった。
1億円の借金を背負い、地獄の日々からの生還。そして移住で癒やされたマヤさんが見つけたものを記事後半で語ります。
モデルを引退後、夫を誘って…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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