16日深夜に起きた福島県沖を震源とする最大震度6強の地震の影響で、各地で停電が起きた。そんな時、役立つのが発電機だ。これから購入しようとする際に頭に入れておきたいことや、使用時の注意点を取材した。(井上道夫)
発電機には出力や燃料の違いなど様々なタイプがある。選ぶ際のポイントはなにか。発電機メーカー、ヤマハモーターパワープロダクツ(静岡県)に聞いた。
家電製品の起動時の電力を調べる
最初に定格出力。定格出力とは、その発電機が安定して出力できる電力を指す。大きければ大きいほど、使える電気製品の種類の幅が広がり、数も増える。電気製品の中には動き始めるときに必要な電力(起動電力)が、消費電力よりも大きいものがあることにも留意しよう。たとえば家庭用冷蔵庫には、消費電力の4倍の起動電力が必要な製品もある。使用する電気製品とその数を考え、その起動電力の合計よりも、大きな出力の発電機を選ぶ。
各家電の起動電力の目安はヤマハ発動機のサイト(https://www.yamaha-motor.co.jp/generator/select/
パソコンやマイクロコンピューター制御の電気製品を使う場合、インバータータイプの機種を選ぶとよい。このタイプは、家庭にあるコンセントからとれる電気と同等の質の電気を出力できる。
ガソリン燃料は長時間使用可 カセットガス燃料はカセットコンロでの使用も
発電機の燃料は大別してガソリンとカセットガス(ボンベ)。ガソリン式のメリットは、ガス式より長く連続運転できること。出力900ワット程度の機種で比べると、使う電気量にもよるが、ガソリン式は2・5リットルの燃料タンクを満杯にすれば、4~10時間程度使える。これに対し、ガス式はボンベを2本入れて約1時間。時間あたりの発電コストもガソリン式の方が安い。
一方、カセットガスは取り換えが簡単。また、カセットコンロの燃料にも使える。コンロがある家庭では、災害への備えの基本となる「日常生活の中で使うものを少し多めに買っておく」という考え方に合致する。
電気の周波数にも要注意。東日本と西日本では異なる周波数で電気が供給されている。東日本は50ヘルツ、西日本は60ヘルツ。電気製品によっては使える周波数が決まっている。発電機側で周波数を切り替えられるタイプもあるが、どちらかの周波数の電気しか出力できないものもあるので注意が必要だ。
エンジンのかけ方も機種によって違う。一般的なのは、「リコイルスターター」と呼ばれるロープを引っ張って始動させるタイプ。慣れれば簡単だが、力を入れるタイミングにちょっとしたコツが必要だ。機種によっては「セル」という装置がついており、車のようにかぎを回すだけでかけられるものもある。
価格は出力やタイプによって異なる。記者が調べると、定格出力約2千ワットのタイプなら、ホームセンターなどで5万円程度で買える。インバータータイプで出力1800ワットの製品は13万~15万円程度。セルつきの上位タイプは出力2800ワットで20万円を超えるものもある。
室内での使用は厳禁
発電機使用時の注意点は?
発電機の製造会社が会員となっている一般社団法人日本陸用内燃機関協会は、室内では発電機を絶対に使わないよう注意を促す。
ガソリン、カセットガスを燃料としてエンジンを動かす発電機からは排ガスがでる。有害な一酸化炭素が含まれている。室内や車内、倉庫での使用は避ける。また、排気が人家に入りそうな場所でも使わない。
発電機の燃料として使うガソリンの運搬・保管には、消防法令の基準を守って作られているガソリン携行缶を必ず使う。ホームセンターなどで買える。20リットルの容量のもので4千円程度。灯油用のポリエチレン容器は使えない。揮発性が高いガソリン向けの仕様になっていないからだ。
ガソリンスタンドは、ガソリンを携行缶に入れて販売する場合、客に運転免許証などの提示を求め本人確認をすることや、使用目的を確かめることなどが義務づけられている。また、セルフ式のスタンドであっても、客自ら携行缶に入れることは禁止されている。必ず従業員に入れてもらう。
購入後は、携行缶を直射日光や高温の場所に置かない▽周囲に火の気がないことを確認▽発電機にガソリンを入れる際は、携行缶のフタを開ける前に発電機のエンジンを止める▽携行缶のふたを開ける前にエア(ガス)抜きをして内圧を下げる▽さらに携行缶を使わない時は、フタやエア(ガス)抜きに使う調整ねじを確実に締める――といった注意が必要だ。
カセットガスの注意点は、大手メーカーの岩谷産業によると、使用期限が保管状況によって異なる点だ。容器がさびていないことを確認し、製造日から7年以内を目安に使い切ってほしいという。同社の製品は、缶底に製造日が印字されている。
◆この記事は2019年10月3日、同9日に朝日新聞生活面に掲載した「発電機 選び方のコツは」「発電機 安全に使うには」をもとに、再取材し、構成したものです。
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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