管理職男性、最近知った「慈悲的性差別」
どこに「地雷」が埋まっているのか分からない。「リハビリ期間だから、くれぐれも無理せずに。慣らし運転でいいから」。育休明けの女性社員にそう言ったのは失敗だった。広島市の50代の管理職男性は「配慮のつもりだったのに裏目に出ました。勘弁してほしい」と苦笑いする。 【グラフ】配慮している?していない? 女性活躍を推し進める会社からは、子育て中の女性を上手にマネジメントするように言われている。慣れない子育てと仕事の両立は大変だろうと、負担が少ないルーティンワークや補助的な業務を頼んだ。でも、彼女には要らぬおせっかいだったよう。「やりがいを感じられない。私は会社に必要とされていないのかも…」。同僚に漏らした声が耳に入り、驚いた。 忙しそうな同僚を手伝いたくても「大丈夫だから、早く帰った方がいいよ」と言われ、真面目な彼女は「期待されていない。排除されている」と受け止めたらしい。「リハビリ」という言葉も気に触ったようで、「出産を病気か何かのように扱うのはやめてほしい」とムッとされた。 この男性が、自分の行動は「慈悲的性差別」に当たると知ったのはつい最近だ。「配慮したつもりが差別だなんて。子育て中は仕事の負担を軽くするべきだという思い込みがありました」と肩を落とす。負荷が少ない業務ばかりでは成長が滞るし、やる気もそいでしまう―。「確かに正論ですけどね」と、男性はため息をつく。 広島県内の大手企業の人事部には、似たような相談が多く寄せられる。担当者は「すれ違いの原因は意思疎通の不足」とみる。子育て環境と仕事へのスタンスは人それぞれ。「一律に負担を軽くするのではなく、個々の状況を見極めながら本人がどんなキャリア希望を持っているかを共有すべきです」と話す。
「重い仕事」避けられるケースも
中には、子どもや家庭の事情から「重い仕事」は避ける女性もいるから難しい。市内の別の管理職男性(54)は頭を抱える。時短勤務の部下に日帰り出張を打診したら「ハラスメント」と訴えられたのだ。 他の人は忙しかったし、彼女のキャリアアップも考えてのことだった。それなのに「時短と知っていて、なぜ出張させるのか」と猛反発された。てっきり「はい」と答えるものだと思ったのに。 彼女は「男性には分からない」が口癖で、手間がかかりそうな仕事は「無理です」「できません」と断る。繁忙期でも悪びれず子どもの行事などを理由に有休を取る。下手に注意して休職でもされたら「管理職失格」の烙印(らくいん)を押されそうで怖い。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース