れいわ新選組の参院議員2人の国会活動などをきっかけに、働く障害者の支援のあり方を見直す動きが進んでいる。通勤・就労時も欠かせない介護の費用が、いまは公的負担の対象外になっているためだ。厚生労働省は公的負担も検討しているが、対象者の範囲や事業主負担の有無など、課題は多い。
れいわ新選組の舩後(ふなご)靖彦、木村英子の両参院議員は今月10日、重度の身体障害者ら約1万1千人が利用する国の福祉サービス「重度訪問介護」の見直しを求める集会を国会内で開いた。自身も重度障害がある木村氏は、通勤・就労時は制度が使えないことに触れ、「重度障害者の社会的障壁」だと指摘。障害者が働き、社会参加できる支援制度の必要性を訴えた。集会に参加した当事者からも、「(制度の不備で)就職をあきらめた。働く権利を奪われた」などの声が上がった。
厚労省は、就労など「個人の経済活動」を公費で支援するのは賛否があるとして、通勤時や自宅・職場で仕事をする時は重度訪問介護の利用を認めていない。視覚障害者の外出を支援する「同行援護」などの福祉サービスも同様だ。就労時の介護支援は、企業などに障害者雇用を義務づけている障害者雇用促進法などに基づき、事業主の判断に委ねられるとしてきた。
障害者の雇用促進のための助成制度はあるが、仕事を補助する介助者や手話通訳の配置などは対象になる一方、身体的な介護は対象外。「福祉」と「雇用」、どちらの枠組みでも、介護がいる障害者の就労を支援できていないのが現状だ。
厚労省は、重度訪問介護を利用する人の就労希望や就労実態などを調査した上で、重度訪問介護だけでなく関係施策の幅広い見直しも含め、できるだけ早く具体策をまとめる方針。同省幹部は「福祉と雇用の切れ目のない支援を目指す」と話す。
課題の一つになるのが、就労時の介護を公費負担する場合の対象範囲だ。障害の種類・程度の線引きによって必要額は変わる上、財源も、福祉と雇用のどちらの枠組みの事業に位置づけるかによって異なる。事業主負担の有無や、就労だけでなく通学・就学時の支援についても検討する必要性が指摘されている。
埼玉県立大の朝日雅也教授(障害者福祉論)は「福祉と雇用のいずれの仕組みも、障害者が介護を受けながら働くことを想定しきれていない。誰もが働きやすい環境を整えなければ、政府が掲げる共生社会の実現や多様性の尊重も、単なるかけ声に終わってしまう」と指摘する。(久永隆一)
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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