元気な子ども対高齢者の構図は誤り 騒音問題を解決するカギは

 《保護者・地域の皆様》

 鳥取県の女性(43)のスマホに今年5月、子どもが通う小学校から一斉メールが届いた。

 《地域の方からご指摘いただきました。『駐車場等に多くの子が集まり、うるさい。近隣に病気等で寝ている人もいることを考えてほしい』。ご家庭でもご指導、ご配慮お願いします》

 一軒家が並ぶ住宅街。自然が豊かで「子育てしやすい」と不動産業者に勧められ、女性は数年前に引っ越してきた。

 小学生の子どもたちは最近、友人宅の駐車場や庭に集まり、家からかすかに届くWi―Fiにゲームを接続して遊んでいる。家の敷地内だから安心だし、友達と約束しなくても「出入り自由」でみんなで遊べるからだ。

 声が大きくなるたび、女性は「大きな声を出したらダメだよ」と注意してきた。それまで近所の人から苦情を言われたことはなかったが、急に、敵意をもって監視されている気がしてきた。

 「引っ越した方がラクになるのかもしれない」と思い悩む。

 地元教育委員会によると、住民1人から「毎日騒音を聞くのがつらい」と苦情の電話があった。

 「子どもの遊ぶ場所が多くないことも理解しているのですが……」

 教委の担当者も悩んでいる様子だった。

 読者の皆さんとLINEでやりとりしながら取材を進める朝日新聞「#ニュース4U」取材班は、女性からの情報提供を受け、さらに投稿を呼びかけた。59件の声が寄せられた。

夏に体育館でイベント「ドア閉めて」と苦情

 埼玉県の60代の女性は3年前の7月上旬の土曜、小学校で子ども向けのイベントを開いたときの体験談を寄せてくれた。

 体育館でドッジボールを始めてから1時間たった午前11時ごろ、近くに住む人から「うるさいからドアを閉めて」と苦情が寄せられ、謝罪に行ったという。

 その日は一部のドアを閉めたが、「もっと暑い日だったら子どもたちは熱中症になってしまう」。

 関東地方のある公立保育園では、子どもたちが園庭で歓声を上げたり、泣き声が大きかったりすると、園と市役所に苦情の電話が来る。園長の指導で、水遊びで水をかけるのは子どもが歓声を上げるから禁止。ドッジボールもさせられない。

 保育士の女性はモヤモヤしている。「好意的に受け止めてくれる方は何も言わない。うるさいという意見だけが採り上げられているのでは」

 逆に、子どもの声に悩んでいるという人からも投稿が届いた。

「心臓バクバク」

 東京都の50代女性が悩むようになったのは数年前。近所に約10軒の建売住宅ができてからだ。

 入居した子どもたちが毎日のように家の前の道路で大縄跳びをしたり、ボールで遊んだり。「子どもたちが出てくる時間だと思うと心臓がバクバクして。自宅に帰りたくないほどでした」

 在宅で働く兵庫県の50代女性は10年近く、自宅前でのボール遊びの音を我慢してきた。「近所付き合いを悪くしたくなくて」。子どもたちの遊び場を奪うようなことはしたくない、との思いもあったという。

 子どもたちが大きくなるにつれ、小さいボールからサッカーやバスケットのボールに変わり、玄関にぶつかって大きな音が響いたことも。「我慢の限界」に達し、子どもの保護者に相談した。自宅前でのボール遊びはなくなったが、「これでよかったのだろうかと、複雑な気持ち」だという。

「うるさい」と感じる理由は

 元気に遊びたい子どもたちと、静かに暮らしたい人たちがいます。どうすればいいのでしょう。「騒音問題総合研究所」代表の橋本典久さん(八戸工業大名誉教授)に聞きました。

     ◇…

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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