人間魚雷「回天」の乗組員だった特攻兵の戦後を描く演劇「さくら 桜」が4月末から、名古屋市内で上演される。同市に住む劇作家の伊藤敬さん(87)が実話に基づき書き上げた。ウクライナ侵攻の惨状が明らかになるなか、作品は、終結しても人々を苦しめ続ける戦争の現実を伝える。
筆を執ったきっかけは、1974年3月のパリ郊外で起きたトルコ航空機墜落事故だった。
乗客乗員約350人が死亡したこの事故は、当時史上最大の航空惨事。犠牲になった日本人約50人は入社前研修で欧州旅行中の大学生が多く、4月に東海銀行(現・三菱UFJ銀行)に入行予定だった伊藤さんのいとこも含まれていた。
伊藤さんは当時、東海テレビのディレクターだった。同僚が関係者取材に向かうなか、「手伝うよ」と声をかけたものの、何もできなかった。
いとこは早大生。東京で好きな絵や音楽の分野で働きたがっていた。だが「長男なんだから地元に帰ってこい」と勧めたのは伊藤さんだった。自身も早大だったが、名古屋に戻り、仕事と演劇を続けていた。「余計なことを言ったばかりに」と悔やんだ。
航空機はパリ郊外の森に墜落炎上し、遺体は損傷が激しかった。日本人遺族は毎年、慰霊に向かうようになる。名古屋周辺の遺族のまとめ役になった叔父夫婦から、伊藤さんは「遺族の中に元特攻兵がいる」と聞かされた。
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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