和歌山県那智勝浦町の慰霊祭には、豪雨で家族を亡くした元町長、寺本真一さん(66)の長男、圭太さん(30)の姿があった。当時、自身も被災しながら復興の陣頭指揮に立ち続けた父の姿に「自分も地域のために」と決意。一度は県外の企業に就職したが、昨年4月、同県庁に転職した。現在は国際課で、外国人観光客らが被災した場合の対応訓練の運営などに携わっている。(前川康二)
圭太さんの実家は豪雨の土砂災害で流され、母の昌子さん=当時(51)=と姉の早希さん=当時(24)=が亡くなった。当時、東京の大学に通っていた圭太さんはバイクで数日かけて和歌山へ。役場では、妻と長女を失った真一さんが町長として気丈に復旧作業にあたり、被災者にねぎらいの言葉をかけていた。その姿に「強い人だな」と感銘を受けた。
大学卒業後、米国留学などを経て民間企業に就職。北海道で働いていたが、高齢となった真一さんを気遣い、帰郷を決断。平成30年1月の真一さんの町長退任後に帰郷し、同年4月、同県庁に採用された。得意の英語力が生かせる国際課に配属された。
今年8月には、県内で外国人観光客らが被災した場合に備えた訓練の運営を担当。参加した外国人らに対し、訓練内容を説明したり、けがの有無などを記載するカードの作成を支援したりした。
「被災経験があるからこそ、災害で困り、悲しんでいる人の気持ちが分かるはず。そういう人に寄り添う仕事をしていきたい」と寺本さん。この日の慰霊祭には真一さんとともに出席し、「1年間、県庁で無事に働くことができたと母と姉に報告した。いつ何が起きるか分からない分、精いっぱい生きて、県の職員として地域の方々に恩返ししたい」と決意を語った。
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Source : 国内 – Yahoo!ニュース
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