元裁判長が無期受刑者に託した腕時計 製造元が考えた時計屋の意味

 「うちの時計だ」。都内に住む萩原康則さん(60)は2月9日、夕食後に手にした新聞で、その腕時計の存在を知った。大学卒業後にセイコーウオッチに就職して38年。いまは執行役員を務める。

 記事の見出しは「元裁判長と 約束の腕時計」。50年前にあさま山荘事件を起こした連合赤軍メンバーで、無期懲役の判決を受けて1983年から服役中の吉野雅邦受刑者に、刑を言い渡した故・石丸俊彦元裁判長が贈ったものだと書かれてあった。

 石丸氏の退官から3年後の92年、吉野受刑者に両親を介して聖書を贈ったのを機に、2人は手紙のやり取りを始めた。2007年、石丸氏は死去。「娑婆(しゃば)に出るときにはこの時計を身につけてほしい」との遺言とともに、石丸氏の妻から腕時計が吉野受刑者の母に届けられた。身元引受人の弁護士が針が止まったままの時計を保管しているという。

 その腕時計は1980年代に製造されたセイコードルチェのクオーツ。ケースに小さな傷があり、革バンドも少しすり切れているが、当時としては高級な商品で、スーツを着て誠実に仕事をしている持ち主の姿が想像できた。

 吉野受刑者が仮釈放されたと…

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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