先生は子どものヒーロー? 「熱中時代」に憧れた僕は浅はかだった

 朝のあいさつをしようとしないやんちゃ坊主たちに悩まされ、新人の小学校教員だった久保敬は5月、熱を出して学校を休んでしまった。

 学年主任だった9歳年上の吉野直子は、このことを意外に感じていた。

 久保が担任をする5年2組の子らが「若い男の先生がやってきた」と喜んでいたのを知っていたし、実際、久保はよくやっているように見えた。

 休み時間は毎日、子どもたちとドッジボールをした。20分間の中休みや昼休みだけでなく、授業の合間の10分休みも全て運動場に出ずっぱり。投げるのもかわすのも全力の久保に、2組だけでなく1組の子も、吉野が担任をする3組の子も大喜びだった。

 たしかに、担任どうしの会議で久保が「うちの子たちはあいさつができない。しっかりやらせたいんです」と言ったことはあった。

 でも、吉野は特に意見はしなかった。「新任がやりたいと言っているんだから、まずはやらせてみよう」との考えで他の先生とも一致していたし、何よりも久保を高く評価していたからだ。

 もちろん、小さな教室で若い担任が「王様」のように振る舞って失敗する例は知っていた。「『20坪の王様』にだけはなるなよ」という考えはちらりと頭をかすめたが、彼ならまあ大丈夫だろうと楽観していた。

 しかし、吉野の一抹の不安は当たってしまった。

発熱…医師に「休めないんです」

 久保があいさつにこだわればこだわるほど、子どもらは反発した。

 心身の疲れは限界に達してい…

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

Japonologie:
Leave a Comment