京都市下京区の京都水族館で南アフリカなどに生息するケープペンギンの卵が産まれ、飼育員らが日々検査する「検卵」が始まっている。真っ暗にした部屋で卵にライトを近づけて照らすと、殻の中の網状の血管が浮き出し、神秘的な光景が生み出された。
館内で飼育、展示されているケープペンギンの卵で、10月27日に産卵された。検卵では重量の計測、胚(はい)や血管の観測、心拍の確認を行う。卵は普段は温度や湿度が維持された孵卵(ふらん)器に置かれているが、野生のペンギンが卵を数分間外気にさらす「放冷」を再現するため、検卵作業時に5分以内で外気にさらすという。
孵化(ふか)は産卵から約40日後の12月上旬ごろの予定で、それまで検卵が続けられる。同館では、親に本物そっくりの擬卵(ぎらん)を預けてから卵を取り上げていて、ペンギンの赤ちゃんが卵中からくちばしで殻を破ろうとする「嘴打(はしう)ち」が始まるとすぐに親の元に戻すという。
ペンギン展示飼育チームの小野地慧(おのちけい)さん(29)は、「検卵中は、割ってしまう怖さもありつつ、神秘的な光景に感動する。ペンギンにも恋をして、家を作って、卵を産み育てるという『人生』がある。命のサイクルにも目を向けて水族館を楽しんでもらえれば」と話していた。(金居達朗)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル