光源氏の知られざるモデルの一人 歌に秀でた美男の墓、なぜ東北に?

 今年のNHK大河ドラマ「光る君へ」の主人公は「源氏物語」の作者・紫式部吉高由里子さん演じる式部が紡ぐ恋物語にゆかりの地が、宮城県内にある。

 名取市西部の山すそにある小さな塚が、「中将藤原朝臣実方(ちゅうじょうふじわらあそんさねかた)の墓」だ。

 藤原実方は平安時代中期の公家・歌人。奔放な愛の歌で知られる。「かくとだに えやはいぶきのさしも草 さしもしらじな 燃ゆる思ひを」の歌は、後の小倉百人一首に選ばれた。容姿端麗で、諸説ある光源氏のモデルの一人だ。

 いわば、京の都のイケメン歌詠み男子。その墓がなぜ東北に?

 実方は、藤原行成とのいざこざから左遷されたとされ、東北の陸奥守(むつのかみ)に任じられた。ある日、現在の名取市にあった神社の前を通るとき、馬から下りるよう言われたのを無視。神罰があたって落馬し、亡くなったと伝えられる。後世、悲運の貴公子を悼み、西行法師や松尾芭蕉が名取の地を訪れたという。

 だが今は、広く知られた場所とは言いがたい。

 地元では実方の墓前での献詠会や短歌コンテストが続けられてきたが、2020年で終了している。

 そこで、伝統芸能の力で「地域の宝」に光をあてようと名取市文化会館は2月10日、実方をテーマに「続・名取寄席」を企画する。講談師の神田織音さんに、実方を主人公にした創作を依頼。浪曲師の玉川奈々福さんとともに、実方と和歌の魅力を伝える趣向だ。そのあとも、実方にまつわる出し物を考えるという。

 大河ドラマ「光る君へ」では、光源氏の別のモデルとされる藤原道長柄本佑さんが演じ、実方の出番は今のところなさそうだ。それでも「大河効果で、名取ゆかりの実方にも注目してもらえれば」と、文化会館の担当者は話す。

 「続・名取寄席」は2月10日午後2時開演、一般3500円。問い合わせは名取市文化会館(022・384・8900)。石橋英昭

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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