後を絶たない高齢ドライバーによる交通事故。高齢者の運転免許返納に向け課題となっているのが、返納後の交通手段の確保です。新たな高齢者の足として期待される乗り物の実験が、名古屋で始まりました。
スーパーでお年寄りが乗っている乗り物。電力で動く1人乗りのカート、その名も「SCOO」です。
ベビーカーなどを生産する岐阜市の会社が開発した「SCOO」。高齢者の新たな移動手段として活用するため、8月から実証実験が始まりました。
名古屋市緑区のサービス付き高齢者住宅に住む、小貫惟彬さん(80)。この日は実験で近くのショッピングモールに向かいました。
速度は最高でも時速5.5キロ、大人の早歩きと同じくらいのスピードです。親子連れで賑わうショッピングセンターでも、ゆっくりと進むことができます。こうした高齢者の安全な移動手段が求められている背景には…。
今年4月、東京・池袋で、乗用車が暴走し、31歳の母親と3歳の娘が死亡した事故。運転していた87歳の男性のアクセルとブレーキの踏み間違えが事故の原因とみられています。
実際に記者も「SCOO」を体験してみました。
(リポート)
「あ、すごいすごい!レバーを引くだけで前に進むので、ものすごく簡単に操作できます」
さらにレバーを放せば、自動的に止まるので、ブレーキとアクセルを間違える心配もありません。
小貫さんは無事、目当てのサングラスを買うことができました。
小貫さん:
「やっぱり通路が狭い。ただ体が不自由になっても、こういう買い物の楽しみは十分できますね」
今回の実験を行っている大同大学の担当者は…。
大同大学 樋口さん:
「今でもシニアカ―とか車椅子はあるのですが、やはりどこか足が不自由になってから使うものというイメージが皆さんあって、なかなかシニアカーは使ってもらえない。元気な人でも使えるように、かっこよくデザインしようと開発されたと聞いています」
「SCOO」は、折りたたんで持ち運ぶこともできるので、さまざまな場所に簡単に設置できますが、一方で小貫さんは、車がないと生活範囲が狭くなってしまうという感想も持ちました。
小貫さん:
「(普段車で)ご飯とか、今習い事してるからそういうところに行く。(SCOOでは)行けない行けない、車で20分くらいかかるから。車やめたら今行ってるところはもう行けなくなるわね」
新しい移動手段も、高齢者が利用してくれなければ意味はありません。こうした移動手段を街のいたるところに設置し、いつでも誰でも利用できる仕組み作りが求められています。
大同大学 樋口さん:
「地域のみなさんや高齢者のみなさんが実際に使えるのか、どういった場面で使いやすいのか、それを明らかにしようということで、(高齢者が)自分の足で自立して移動できるような社会を目指してやりたいと思っています」
今回の実証実験で、理想的な将来像として描いているのが、高齢者のみなさんが自宅から歩いて行ける範囲に「SCOO」のステーションを設置すること。
さらに、高齢者施設や街のスーパーなどにも「SCOO」があれば、さまざまな場所で乗り継ぐことができるので、まずデイサービスに行って、そのままスーパーにお買い物に行って、また自宅に帰って来るということができます。
そのように「SCOO」を街中のいたるところに置くことができれば、新しい交通手段として機能するということです。
高齢者にとっては、生活の範囲が狭くならず、むしろ範囲が広がるような形になると、利用がしやすくなるかもしれません。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース
Leave a Comment