川崎市多摩区でスクールバスを待っていた私立カリタス小の児童らが殺傷された事件は、4日で発生から1週間。事件に巻き込まれるなどした同小の児童の心のケアは、どうなっているのか。臨時休校となっている学校は5日に再開予定で、教員らには的確な対応が求められる。専門家は「混乱した子供たちの『怖い』『悲しい』といった感情に共感してあげることが大切」と強調する。
■まず話を聞く
バス停待ちの児童らが次々に襲われた今回の事件。岩崎隆一容疑者(51)に切りつけられ負傷した児童以外にも、多くの児童が凄惨(せいさん)な現場の目撃者になったとみられる。
神奈川県によると、カリタス小の系列校であるカリタス女子中・高校には事件前からスクールカウンセラー1人が常駐。同小にも非常勤で3人が対応する態勢が整っていたが、県は事件が起きた5月28日中に臨床心理士の資格を持つ県教委の担当者を派遣した。
学校側は当初、児童全員のカウンセリングを行う予定だったが、臨床心理士から「事件の記憶を呼び覚ます。やってはいけないことをやろうとしている」との指摘を受けて方針変更した。県教委や川崎市の担当者は30、31日にも学校を訪れ、教員らに児童への対応方法を助言した。
学校が再開したら、通常通りに授業を受けさせる。事件を思い出し、泣き出す児童がいれば泣かせておく。学校に行きたがらなければ休ませる。児童を注意深く観察し、異変に気づくようにする。そして、顔見知りのスクールカウンセラーがまず話を聞くことが重要だと伝えたという。
■「簡単に消えない」
スクールカウンセラーで、子供の心のケアに詳しい新潟大の長沢正樹教授は「小さい子供は何が起きたのか理解できず、混乱している。恐怖や悲しみといった感情に共感してあげるべきだ」と話す。時間がたち、落ち着きが出てきたとしても「感情は簡単に消えない」と注意を促す。
特に現場にいた児童は当時の音やにおい、騒然とした様子などがすり込まれている可能性があると指摘。「救急車のサイレンを聞いたり、子供の列を見たりしただけで恐怖を感じてしまうなど、似た状況を事件の記憶と結びつけてしまうかもしれない」と説明する。
カリタス小では、不安を募らせる保護者の対応にも苦慮。学校再開前の4日に説明会を開くことにし、県教委の臨床心理士にも話をしてもらうという。
事件は、現場周辺の子供たちの心にも影響を与えた可能性がある。川崎市は5月29~31日に近隣の市立登戸小学校にスクールカウンセラーを常駐させて対応。文部科学省は県や市の要請があれば、スクールカウンセラーの追加派遣などで生じる人件費を補助する意向を示し、担当者は「他県からも相談があれば対応したい」と話している。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース