聞き手・桑原紀彦
大学に合格すると入学金の納付期限があり、受験生の多くが進学先以外の大学にも支払っている実態がある。そんな中、大東文化大学(東京都板橋区)は2012年度の入試から国公立大学の前期日程の合格発表後に期限を延期できる制度を導入。この10年で志願者を増やした。入試担当の中村宗悦副学長は「少子化で受験生の獲得競争が激化する中でも、手応えを感じている」と話す。
――入学金の納入延期制度とはどんなものですか。
「大東文化大の入学金は、約21万円。申請すれば、2月下旬の納付期限を3月上旬の国公立大前期の合格発表翌日まで延期できる。12年度の入試から法学部法律学科で始め、国公立大と併願が多い文学部教育学科に広げ、20年度入試からは全学科を対象に実施している」
「基本的に我々の大学は、他大学と併願する受験生が多い。そういった状況で、国公立大を志望して残念ながら不合格になった子たちに、少しでも多く来てもらうためにはどうすれば良いかを考えた。08年のリーマン・ショック後、高校の進路担当者と話をするなかで、経済的に厳しい家庭が増えており、『入学金の負担が重い』『延納制度があれば良い』という声を聞き、導入を決めた」
――その結果、志願者が増えるなどのメリットはありましたか。
「この制度を申請した合格者は、初年度が15人。対象となる学科を増やしていったため、昨年度は166人、今年度は138人が申請した。一方、進路調査会社のデータによると、12年度の志願者数は1万5949人だったのが、今年度は2万3834人で5割近く伸びている。ほかに取り組んだ入試改革の効果もあるが、いわゆる『大・東・亜・帝・国(大東文化大・東海大・亜細亜大・帝京大・国士舘大)』と呼ばれるグループでは一番増加率が高く推移した」
「調査会社による分析では、志願者の在籍高校も、より進学率の高い高校になってきている。北陸など、それまで多くなかった地方からの受験者も増えた。また、国公立大との併願者は優秀な学生が多く、入学後も学年の先頭集団として、リーダーシップをとって学生たちを引っ張ってくれている」
延納認めるデメリットは
――延納によるマイナスの影響は。入学者がどれくらいか読みにくくなりませんか。
「確かに事務作業は増えるが…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル