田内康介
政府は7日、不法残留する外国人らの迅速な送還や、入管施設での長期収容の解消を目的とした入管難民法改正案を閣議決定した。難民認定の申請中は送還が一律に停止される規定を見直すなど、廃案となった2年前の旧法案の骨格を維持した。難民支援者らは「本来保護されるべき人が送還されてしまう」と批判しており、激しい対決法案となる。
出入国在留管理庁によると、不法残留などの外国人で、強制退去処分になっても送還を拒む人は3千人超で推移している。
入管庁は、送還を妨げている理由として、難民認定の申請中は回数や理由を問わずに一律に送還が停止される規定の「乱用」を挙げ、収容の長期化も招いていると問題視する。このため、改正案では、3回目以降の申請者(相当な理由がある場合は除く)や、3年以上の実刑判決を受けた人らには規定を適用せず、送還できるようにした。
収容に代わる措置も
飛行機で暴れて送還を妨害した場合などを対象に、罰則付きの退去命令制度も創設する。一方で、摘発されても、自発的に帰国すれば、再入国できない期間を5年から1年に短縮し、速やかな帰国を促す。
長期収容の解消策としては、送還まで原則収容としてきた規定も改め、収容に代わる「監理措置」を導入。「監理人」となる支援者らの下で、収容せずに強制退去の手続きを進める。収容か監理措置かは逃亡の恐れなどを考慮して個別に判断し、収容した場合は3カ月ごとに監理措置への移行を検討し直す。
「国際的な人権基準満たさず」
また、紛争から逃れた人らを難民に準じて保護する「補完的保護対象者」制度の導入も盛り込んだ。入管庁は、難民条約上の難民に当たらないとみるウクライナからの避難者らが、新制度の対象になると見込む。難民同様に定住者の在留資格が与えられる。
旧法案は2021年の通常国会に提出された。日本の難民認定率は海外に比べて極端に低い1%程度にとどまる中で、難民申請を制限するなどした内容に、国内外から「国際的な人権基準を満たしていない」との批判が出た。政府・与党は、名古屋入管に収容中だったスリランカ人女性が同年3月に死亡した問題を受けて成立を断念し、同年秋の衆院解散で廃案となった。(田内康介)
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル