全国に広がる「抱っこ」の輪 たった一人で始めた亡き女性の思い

 乳児院児童養護施設を訪れ、そこで暮らす子どもを抱きしめるボランティア活動が、団体の設立から10年を迎えた。愛を求める小さな赤ちゃんたちを、今日も惜しみなく抱きしめましょうね――。そんな思いを込めて、全国に広がる活動を始めたのは、今は亡き1人の女性だった。(富岡万葉)

子どもたちが本当に求めているのは……

 「だっこ、してー」。3歳の男の子が、ボランティアの男性(51)に抱きつくと、恥ずかしそうに胸元に顔をうずめた。ギュッと抱きしめ返されると、パッと顔を上げて笑う。並んで列車遊びやままごとをしていると、今度は小学生の女の子が男性の背中に飛び乗ってきた。

 一般社団法人ぐるーん(岡山市)に登録する男性は、児童養護施設「岡山市善隣館」に月4回ほど通い、5年になる。子どもたちとは打ち解けた仲だ。

 子どもの性格に合わせ、ほどよい距離を保った見守りを心がけているが、初対面でくっついてくる子が多いという。「甘えられる人を求めているのかな」

 「定期的に遊んでくださるので、子どもたちも毎回楽しみにしています」と善隣館の岩井竜一館長(54)は話す。職員は、洗濯や掃除といった施設の家事に加えて事務作業もあり、子どもたちと遊ぶ時間を十分とるのは難しいという。

 「ぐるーん」の「抱っこ活動」は、神奈川県に住んでいた有尾美香子さんが始めた。公式ホームページで公開している動画やブログで、有尾さんはきっかけや思いを語っている。

 シングルマザーとして2児を育てる中で「私が体を壊したら子どもたちはどうなるんだろう」と思ったこと、虐待を偶然見つけたこと、保護された子が集まる児童養護施設と接点を持ちたいと考えたこと。

 そして、物を贈るなどのボランティアを続けるうちに、子どもが本当に求めているのは抱っこだと気づいたこと――。

 「私と子どもたちは毎晩抱き…

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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