「平和」のモニュメントとして、昭和期以降に全国各地に造られた巨大な仏像は多くが観音像だ。その姿は、日本の近代化により独自に形作られてきたという。なぜ多様な仏像の中から観音像が選ばれたのか。共通の特徴がある理由とは。昨年10月に『観音像とは何か――平和モニュメントの近・現代』(青弓社)を出版した君島彩子・日本学術振興会特別研究員(宗教美術史)に聞いた。
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大観音像の多くに共通する特徴は、女性的な顔立ちで、頭や肩を布で覆い、全身が白く塗られていることだ。君島さんはその端緒に、明治期に入って、仏像が信仰の対象としてだけでなく美術作品としても捉えられるようになったことを挙げる。「西洋から絵画や彫刻のイメージが入ってくると、観音は聖母マリアやギリシャ・ローマの女神のイメージとマッチしたため、美術の題材として人気を集めた」
きみしま・あやこ 1980年東京生まれ。日本学術振興会特別研究員。専門は物質宗教論、宗教美術史。「現代の『マリア観音』と戦争死者慰霊――硫黄島、レイテ島、グアム島、サイパン島の事例から」で第15回涙骨賞を受賞。
「観音経」で、三十三の姿に変じて出現すると説かれる観音は、表現の幅が広く、古くから様々な姿で描かれてきた。
近代にふさわしい観音像は…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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