親の信仰で生活などに様々な影響を受ける「宗教2世」の実体験をテーマにした漫画「『神様』のいる家で育ちました~宗教2世な私たち~」(文芸春秋)が今月発売された。別の出版社で昨年、インターネット配信が始まったものの、公開が取りやめになった経緯がある。改めて出版されたことに、作者の菊池真理子さんは「タブーとされがちだった宗教の話題。今度こそ、2世の思いをたくさんの人に知ってほしい」と話している。
菊池さんも、母親が仏教系の新興宗教を信仰していた宗教2世。漫画では、自らも含め、宗教や家庭環境が様々な7人の視点で、2世たちの思いを描いている。
もともと、昨年9月から別の大手出版社のウェブメディアで1話ずつ連載として公開していた。しかし、今年1月に公開を始めた第5話は、約2週間で公開停止になった。
菊池さんによると、漫画に登場した宗教団体から抗議があった、と担当の編集者に聞かされたという。
出版社は、サイト上で「エピソードはいずれも『宗教2世』への取材をもとに構成したものでしたが、結果として特定の宗教や団体の信者やその信仰心を傷つけるものになっていたことは否めません」などと公開停止の理由を説明した。
菊池さんと出版社側は、第5話の公開が停止された後、以降の連載について協議を重ねた。菊池さんによると、編集者からは、「親との関係に悩んだことだけを書く」など、すでに公開した作品の書き直しも含め、宗教の要素をなくした形にすることを提案されたという。
協議の末、菊池さんは3月に、連載そのものを終了させる判断をした。自らの「宗教のことを書くことに意義がある」という考えと一致しなかったためだ。その結果、第5話に加え、1~4話も公開停止となった。
菊池さんは、「やっぱり、宗教のことを知ってもらうのは難しいのか」と落胆した。しかし、公開停止から連載終了までの一連の流れを受け、ツイッターでは2世とみられるアカウントが中心になり、「#菊池真理子先生の宗教2世漫画を読ませて下さい」などとする発信が相次いだ。
こうした動きに後押しされる形で、菊池さんも「2世たちの話を聞かせてもらった責任がある」と考え、ほかの方向で公開できないか模索を始めていた。そこへ、文芸春秋の担当者から声がかかり、発刊にこぎつけた。
安倍晋三元首相が銃撃された事件を受けて、宗教2世への注目が高まっている。
それでも、菊池さんは「特異な存在だと思われるのを恐れ、宗教2世であることを打ち明けられない人たちも多い」と言う。
「漫画をきっかけに、そうした人に思いを寄せてもらい、当事者も声を上げやすくなるきっかけになれば」と話している。(中井なつみ)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
Leave a Comment