登山者に人気の六甲山系。最高峰(931メートル)へ向かう登山道の一つが7月、崩落のため通行止めとなった。道に迷う登山初心者らが相次ぐ中、安全なルートを教えたり、一緒に登ったりした健脚家がいた。
兵庫県芦屋市奥池町の医師、増村道雄さん(72)。登山好きが高じて約20年前、神戸市須磨区から六甲山の登山道が近い現在の自宅に引っ越した。天気が良ければ週1回の登山は欠かさない。須磨区から宝塚市までの約60キロを歩く「六甲全山縦走」を13回完走した経験もある。
増村さんは主に、自宅近くの登山口から土樋割(どびわり)峠を経て「七曲りルート」へ入り、山頂近くの一軒茶屋(神戸市東灘区)に出て最高峰まで歩く。七曲りは阪急芦屋川駅方面から登る王道ルートでもある。
神戸市森林整備事務所によると、7月13日、この七曲りルートの一部で約10メートルにわたって崩落が発生しているのを市職員が確認。ルートの入り口にロープを張り、入り口や周辺の複数箇所に「通行止め」の案内を掲示した。
ただ他の登山道へ誘導する案内表示がなかったり、わかりにくかったりしたためか、右往左往してしまう登山者が続出。増村さんも8月上旬、熟練者向きの「黒岩谷ルート」の入り口付近に、立ち止まって地図を見ている登山者たちを見かけた。このルートは主に河原を歩き、初めて歩く登山者では判断しにくい分岐点もある。
「山頂に行くんですか?」と声をかけ、一本道で迷う心配が無いルートを案内した。細い道や崩落しそうな沢に入っていく登山者には「間違っていますよ」と注意を促した。約3カ月間で最高峰まで一緒に登った人は35人にもなったという。
市は、崩落現場近くに迂回(うかい)路を整備し、通行止めは11月16日に解除された。
増村さんは「通行止め箇所に来て初めて七曲りが通れないと知る人が多かった。別の道を探して熟練者向きのルートに入ってしまう人もいた。案内表示がしっかりしていれば、迷う人はいなかったと思う」と振り返った。(松永和彦)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル