萩生田光一文部科学相は17日、2020年度から始まる大学入学共通テストで導入される国語と数学の記述式問題について、「導入見送りを判断した」と記者会見で表明した。採点ミスの懸念や自己採点の難しさなどが解決できず、「受験生の不安を払拭(ふっしょく)し、安心して受験できる態勢を整えることは現時点において困難」と説明した。政府は11月1日、記述式と並ぶ共通テストの柱の一つだった英語民間試験の活用も見送りを決めており、大学入試改革は二枚看板を失った。
萩生田氏は「生徒や保護者、教師をはじめとする関係者の皆様にはご迷惑をおかけする結果となり誠に申し訳なく思いますが、ご理解を賜りたい」と謝罪した。
今回の見送りについて、「期限を区切った延期ではない」と述べ、今後については「まっさらな状態から対応したい」とした。萩生田氏の下に設置する検討会議で、英語4技能の評価方法などと共に議論していくという。また、各大学の個別試験での記述式導入も求めていくという。
自身や歴代大臣、文科省幹部らの責任を問われると、「見送りを決断したのは私だから私に責任がある」とした上で、英語民間試験と記述式問題の導入に向けた取り組みについて、「与党全体の考え方の中で行ってきたので、その時々の大臣までの環境の中でベストを尽くしてきたと思う」と述べた。
記述式問題は、「思考力・判断力・表現力」を測る切り札として、共通テストへの導入が決まった。約50万人分の答案の採点には、民間委託で集めた1万人近い採点者が短期間に作業にあたることになっていたが、採点者の質の確保や採点ミスがなくせない点などが問題視されてきた。
記述式問題や英語の民間試験の活用は見送られるが、共通テスト自体は、マークシート式で実施される。現在の高校2年生が受験する2021年1月から、現行の大学入試センター試験に代わり始まる。
共通テストをめぐっては、英語民間試験について、今年9月に就任した萩生田氏がテレビ番組で「身の丈に合わせてがんばってもらえれば」などと発言。受験生の住む地域や経済状況で受験機会に格差が生じる問題が解決できない中で、批判が集中した。記述式についても、国会で野党が採点ミスの問題などを追及。受験生や高校教師らが中止を求める署名を提出するなど抗議活動に発展した。(宮崎亮)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル