兵庫県内で六条大麦が2年連続の大豊作となっている。県内の作付面積の8割強を占めるJA兵庫南管内では、2019、20年産の10アール収量が平年からほぼ倍増した。六条大麦は播種(はしゅ)前契約での取引が基本で、豊作を受けて新たにまとまった販路を確保するのは難しい。JAは加工品の開発や飼料への活用など新たな需要を模索するが、限界もあり対応に苦慮している。(北坂公紀)
飼料や加工品 新需要を模索
JA兵庫南管内で今夏に収穫された20年産の作付面積は435ヘクタールに上り、品種は全て「シュンライ」。収穫後はJA全農兵庫を通じて、麦茶メーカーでつくる全国麦茶工業協同組合に販売している。 JA管内ではここ2年、豊作が続く。19、20年産の10アール収量は共に400キロを超え、16~18年産の平均(218キロ)に比べてほぼ倍増した。農水省によると20年産は集計中だが、全国データがある19年産で、10アール収量の平年比の伸び率は兵庫県が全国最大だった。 JAの野村隆幸専務は「播種期と収穫期が好天に恵まれた。19年産から麦踏みの回数を増やすなど、管内を挙げて栽培管理を工夫したことも奏功した」と話す。 一方で、頭を抱えるのが販路の確保だ。六条大麦は一般的に、収穫前年の秋ごろに結ぶ播種前契約でほとんどの販路が決まる。 その際、契約数量にアローワンス(一定の幅)が設けられ、作柄が変動しても、取引量がその範囲内に収まればよい仕組みとなっている。 農水省によると、上下20%程度の幅が設定されることが多いという。逆に、実需は播種前契約で国産麦の多くを調達するため、それ以降に国産麦のまとまった販路を新たに確保するのは難しい側面もあるという。 JA管内ではここ2年、アローワンスを大幅に上回る豊作となり、作柄を受けて新たに販路確保に動く事態となった。19年産では何とか確保したものの、2年続けては難しいのが現状だ。 JAは今夏から、大麦麺や大麦グラノーラといった加工品の開発に乗り出した。さらに六条大麦を肉用牛の飼料として活用することも検討する。財務省の貿易統計によると、19年度の飼料用大麦の輸入量は91万トン。「国産の大麦飼料はほとんど聞いたことがない」(農水省)など、多くを輸入に依存する点に着目した。 ただ、課題となるのが畑作物の直接支払交付金(ゲタ対策)だ。ゲタ対策は生産量に応じて交付金が出る制度で、生産者の所得を支える役割がある。しかし、交付を受けるには六条大麦を主食向けに販売する必要があり、飼料向けは対象外だ。 野村専務は「飼料自給率の向上を通じ、食料自給率の向上にもつながる。米やトウモロコシと同様、大麦でも飼料での活用を後押しする仕組みが欲しい」と話す。
日本農業新聞
Source : 国内 – Yahoo!ニュース
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