全国に展開する大手ファストフードチェーンの新卒採用の内定をもらってから、1カ月が過ぎたころだ。
大学4年生の男子大学生(22)は自宅でスーツを着て、ノートパソコンに向きあっていた。画面の先には、内定を出してくれた企業の採用担当者がいた。
会議が始まってすぐ、就職の内定を辞退したいことと、その理由を告げた。
「SNSの世界で、生きていこうと思います」
知り合いからは、安定した道に進むべきだとこぞって反対された。反対されるとわかっていたから、親には相談さえしなかった。
それでも、SNSで生計を立てる自信はあった。
「アノニマス」というアカウント名で、動画投稿アプリ「TikTok」や投稿サイト「YouTube」に動画を投稿。ほかのSNSも合わせて、フォロワー数は100万人を超える。
福岡市の繁華街で、通行人に「ストリートスナップの写真を撮らせてほしい」と声をかけ、相手が応じてくれるまでの短い会話のやりとりを撮影する。それを1分ほどにまとめた動画が人気となり、いまでは道行く人から逆に声をかけられるなど、若者の間で知られた存在だ。
動画投稿に本格的に取り組みはじめたのは昨年1月。自身の知名度と影響力をどうしたら高められるか、それをどう生かすべきなのか。
ずっと考え続けたすえに、就職の内定を断り、SNSの世界に飛び込むことを決断した。
ヒントは海外の人気動画、予想を超えてフォロワー急増
原点にあったのは、貧しかった少年時代の経験だ。
子どものころ、すり切れた畳…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル