内密出産望む女性の「赤ちゃん」と対面 その4文字に命の重み込める

 熊本に赴任した昨春、慈恵病院(熊本市)の取材を始めた。予期せぬ妊娠をめぐる現実の一端が見え始めた昨年12月に西日本の10代女性が匿名のまま赤ちゃんを産むと、病院が独自に導入している内密出産を望み、一人で退院した。病院の会見で断片的に浮かぶ女性の境遇から、私は国内初の事例になるのではないか、と予感した。

 蓮田健院長ら病院関係者の言葉には、赤ちゃんの命を守る責任感と緊迫感がにじんだ。原稿を書く私はといえば、「赤ちゃん」という言葉の実感がつかみきれなかった。女性は退院の日、泣きながら赤ちゃんを抱っこしたという。その赤ちゃんを知らずして、命の重みや関係者の思いを伝えてよいのか。「赤ちゃんに会わせてもらえないでしょうか」。取材の際に院長にお願いした。

 新生児室の前に案内された。ガラスの向こうで看護師に抱かれた赤ちゃんが、顔をじっと見上げながら小さな手を愛らしく動かしていた。幾度となく記事に「赤ちゃん」と書いた、その子だった。母親の女性が「かわいい」と言い、何度も泣いて、それでも別れた我が子――。

 帰り際、院長は「この子には…

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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