告げられた命の残りは約2カ月、最期まで声を上げる――。1967年に茨城県利根町布川(ふかわ)で起きた強盗殺人事件で有罪となり、44年後に再審で無罪になった桜井昌司さん(73)が、末期がんを患いながら「冤罪(えんざい)のない社会に」と伝え続けている。15日の国家賠償請求訴訟の控訴審では、病状とともに、違法捜査の検証や証拠の全面開示の必要性を裁判官に訴える。
「うその自白をするなんて思っていなかった。狭い取調室で理不尽に疑われ、心を折られてしまった」。今月3日、桜井さんは愛知大学法科大学院(名古屋市)の講義で、学生らに語りかけた。
大工の男性(当時62)を絞殺し金を奪ったとの疑いで逮捕されたのは、20歳のときだった。「兄の自宅にいた」とアリバイを捜査員に話したが、「目撃者がいる。否認すると死刑になる」と何度も迫られた。「死刑になるかもと思い、やっていないけど自白した」。裁判での無罪主張は認められず、一審判決は自白調書と目撃証言を元に無期懲役に。最高裁まで争ったが覆らなかった。
無罪判決知らぬまま亡くなった両親
獄中生活は29年間におよび、…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル