冤罪主張、裁判員は苦悩「違う人に死刑かも」 妻子殺害

 家族3人を殺害した罪で起訴され、無罪を訴えた元警察官に対し、裁判員裁判が導き出した結論は極刑だった。福岡県小郡市の住宅で2017年、母子3人の遺体が見つかった事件の判決。直接的な証拠がないなか、福岡地裁の判決は「3人を殺害したのはいずれも被告」と断じ、元福岡県警巡査部長の中田充(みつる)被告(41)に死刑を言い渡した。

 中田被告はグレーのスーツ、白いシャツを身にまとい、福岡地裁912号法廷に姿を現した。髪は短く刈り上げていた。弁護側の席に座る際、一瞬、傍聴席に目を向けた。

 「被告人は座ったままで聞いてください。事案に鑑み、判決の理由を先に説明します」。柴田寿宏裁判長はそう述べ、判決理由の朗読を始めた。

 「何より、子どもたちを殺害したことについて、酌量の余地がない」。終盤、この言葉から語気が強まった。

 被告は終始、裁判長の方を真っすぐ向き、表情は崩さなかった。両手を握り締めて両ひざの上に置き、身じろぎもしない。

 30分後の午後3時すぎ、柴田裁判長が告げた。

 「主文、被告人を死刑に処する」

 背筋を伸ばして聞いていた被告は、このときも表情を変えることはなかった。

 判決後、被害者3人の遺族は弁護士を通じコメントを発表した。「このたびの判決については、私たちの意見と異なることはありません」。そして、こう続いた。「殺された理由や、詳しい事実は結局分からないままとなりました。この点には到底納得がいきません。今はただ、由紀子、涼介、実優(みゆ)の思い出と共に静かに過ごしたいと願っております」(大森浩志郎)

 判決後、裁判員を務めた男性3…

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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