20歳の誕生日を刑務所で迎え、さらに所内で1年を過ごした時だった。担当する教官が、交わしている日記にこう書いてくれた。「十分な収穫があった一年だったのではないでしょうか」
埼玉県川越市にある川越少年刑務所。21歳のシュン(仮名)は細身の丸刈り頭で、落ち着いた口調は年齢より大人びて見える。面会に訪れた記者に「断り切れない性格も、罪を犯すことにつながったと思います」とうつむきながら振り返った。
自分と向き合い、成長を認められるようになったのは、この刑務所で試行が始まった新しい「矯正処遇」の成果でもある。
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シュンは悩みを周囲に打ち明けられない性格だった。幼いころの体験が影響していた。
東海地方で生まれ育った。小学生の時、義父から日常的に暴力を振るわれ、母から誕生日に贈られた自転車を目の前で捨てられた。虐待に気づいた小学校の先生が警察に通報したが、警察官は義父を注意するだけだったという。
相談できる人も、助けてくれる人もいない。暴力を振るわれていることを周囲に話すと暗い雰囲気になる――。そう思い、学校では明るく振る舞った。もめ事を避けるため、意見が違っても他人に合わせるほうがいいと思うようになった。
高校卒業後、母に負担をかけたくなくて、一人暮らしを始めて飲食店で働いた。コロナ禍で収入が減って生活が苦しくなった頃、高校時代の先輩から仕事を紹介された。建築関係と言われたが、実際は違っていた。
スーツ姿で東京に来るように求められた。初めの数日は、言われるまま駅で待機した。その後、お年寄りの家に行き、物を受け取るように指示された。「息子の代わりに来てくれてありがとう」と話す高齢の女性からお金を受け取った。
詐欺と気づいた。
1回の報酬は約3万円。宿泊費と交通費でほとんどなくなった。詐欺に関わるのは嫌だと思い、「もうできない」と先輩に伝えた。しかし、「お前のことはすぐに探すことができる」と脅された。地元で居場所がなくなるのが怖かったし、強く言ってくる相手に反発できなかった。
いつか逮捕されると思っていた。ただ、何とかしようと考えるうちに同じような行為を7回繰り返した。逮捕は1カ月後だった。
全国の刑務所では、受刑者の改善更生のために効果的な方法を探っています。後半では、川越少年刑務所の新たな取り組みに参加するシュンが授業や担当教官との日記を通してどのように変化したのか伝えます。
■「懲らしめ」から「立ち直り…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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