3匹の柴犬(しばいぬ)の死をきっかけに、あるペットショップチェーンが、販売するすべての子犬・子猫の遺伝子検査をはじめました。人が交配の組み合わせを決めて繁殖、販売する犬猫では、原因がわかる遺伝性疾患の「予防」は可能です。ペット販売の現場における、犬猫の遺伝性疾患への取り組みを追いました。
犬種や猫種に特有の遺伝性疾患がいくつも存在します。それは、人が純血種として固定化してきた結果として生じたもの。一方で、人が交配の組み合わせを決めて繁殖、販売する犬猫では、原因遺伝子が一つに特定されている遺伝性疾患の「予防」も可能です。犬猫の遺伝性疾患を巡り、ペット販売の現場では何が起きているのか。消費者の側にはどんな問題があるのか。朝日新聞が入手した独自データなどをもとに、3回にわたって報告する連載の初回です。
死亡した3匹の柴犬
2019年の冬から春にかけて、3匹の柴犬が次々と息を引き取った。17年9月生まれのきょうだい犬で、それぞれの飼い主に「さくら」「もみじ」「大福」と名付けられていた。
3匹の飼い主に面識はなく、全く別の場所で飼われていたが、最初の春を迎えた頃、3匹とも頭が小刻みに震えたり、少しの段差でもつまずいたりするようになった。一般的な血液検査などでは原因がわからず、MRI検査までしてやっと病名が判明した。柴犬で多く見られる遺伝性疾患「GM1ガングリオシドーシス」だった。
生後半年ごろに発症する病気で、最初は歩き方に違和感が出る。次第に歩くのが困難になり、四肢がつっぱったようになって寝たきりに。多くが1歳半ごろには死んでしまう、致死性の不治の病。一方で、人が意図的に交配の組み合わせを決めて繁殖する販売用の犬猫の場合、単一の原因遺伝子が特定されていて、検査方法が確立している遺伝性疾患であれば、「予防」が可能だ。
血統書から、3匹は愛知県豊橋市の業者が繁殖した犬だとわかった。19年1月、業者を取材した。JR豊橋駅から車で30分ほど走った、住宅と畑が点在するなかに、その業者の犬舎はあった。平屋のプレハブ小屋に、柴犬ばかり数十匹が飼われていた。
記事後半では、遺伝性疾患をめぐるペットショップや競り市の対応に迫ります。飼い主から提供いただいた「GM1ガングリオシドーシス」を発症した柴犬「さくら」と「もみじ」の動画も配信しています。
40年以上にわたり繁殖業を…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
Leave a Comment