新型コロナウイルス対応の緊急事態宣言は12日、6都府県に対象を拡大して延長された。休業要請が一部で緩和され、東京都内では遊園地や劇場、演芸場などで営業が再開した。一方で、休業要請や協力依頼が続く映画館の対応は割れた。業種で異なる休業要請の線引きへの戸惑いの声も根強くある。
緊急事態宣言に伴い4月25日から休園していた遊園地の「浅草花やしき」(東京都台東区)は12日から営業を再開した。園内の滞在人数は5千人に制限。マスク着用の呼びかけや、入場時の検温、遊具のこまめな消毒などをしながら、来園者を受け入れた。
4歳と1歳の孫を連れてきた千葉市の50代女性は、「後ろめたさは正直あるけれど、公園も混んでいる。遊園地ならこまめに消毒をしていてまだ良いかと思って来た」と話した。
ただ、平日ということもあり客足はまばら。園の担当者は「再開できてほっとしているが、この先どうなるかわからないのが不安。(休業要請などは)もう少し早く方針を決めてほしかった」と話した。
宣言が出た後も一時は通常通りの興行を続けた都内四つの寄席も興行を再開した。浅草演芸ホールの松倉由幸社長は「寄席が閉まっているのは、命を削られるようにつらい。お客様の笑い声を聞けるのはうれしいことです」と話す。一方、「手放しでは喜べない。映画館が休業要請で閉まっているのはつらいことです」と気遣った。
歌舞伎座では3日が初日の予定だった「五月大歌舞伎」が開幕した。劇場正面には「本日初日」の幕が掲げられ、入り口で検温と手の消毒を済ませた観客が距離をとって入場した。
派遣社員の女性(47)は「日常の楽しみも必要なので劇場再開はうれしい。舞台に関わる人が大変な中、応援したい気持ちもある」と話す。今月はあと2回ほど観劇する予定という。ふだんも通勤しているが、「あちこちに立ち寄らないよう気をつけています」。
今回の宣言延長に際し、劇場の規制緩和はぎりぎりまで決まらなかった。歌舞伎座の原祐道副支配人は「再開できるかわからないまま、俳優やスタッフは気持ちを切らさず準備を重ねていた。安全に公演を続けられるよう、感染対策をより徹底したい」と話す。
劇団四季の各劇場や東京宝塚劇場などではミュージカル公演が再開され、国立劇場の文楽公演や新国立劇場の演劇公演も開幕した。
宝塚歌劇星組公演「ロミオとジュリエット」を観劇に訪れた会社員の女性(34)は「イベントを中止にするなら、理由をきちんと説明してほしかった。今も映画館や美術館がなぜダメなのかわからない」と話した。(井上秀樹、編集委員・藤谷浩二)
■「説明できないなら、要請撤…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル