旧ソ連の歌謡曲「百万本のバラ」を日本語訳して歌い継いできた歌手の加藤登紀子さん(78)は、ロシアとウクライナの両国に縁がある。民間人も巻き込まれている今回の侵攻に、何を思うのか――。
加藤さんは1943年、旧満州(中国東北部)のハルビン生まれ。現地でロシア語を学んだ父親の幸四郎さん(故人)が終戦後、東京でシベリアを流れる川の名前からとったロシア料理店「スンガリー」、72年に京都でウクライナの首都の名前を冠した「キエフ」を開いた。東京大在学中の65年に歌手デビューした加藤さんも、ロシアやウクライナから招いたコックら旧ソ連の人々と交流を深めてきた。
百万本のバラの花を あなたにあなたにあなたにあげる――
86年から歌い続ける「百万本のバラ」は、もともとラトビアの作曲家がつくった曲にロシアの反体制詩人が詩をつけた歌謡曲。加藤さんは自ら日本語に訳し、代表曲の一つとなっている。
旧ソ連の国々と縁が深い加藤登紀子さん。後半のインタビューでは、「百万本のバラ」の誕生秘話や軍事侵攻への複雑な心境を語りました
「あらゆる国家の問題を武力で解決してはいけない。あくまで冷静に。戦争に加担しようという動きが出てこないようにしなくてはいけない」
軍事侵攻から1週間となった3日、東京・神保町の岩波ホール。旧ソ連に支配されたジョージアの作家と旧ソ連の元役人の「過去との和解」をテーマにした、ジョージア人監督による映画「金の糸」(配給ムヴィオラ)のゲストトークに招かれた加藤さんはこう訴えた。「一番危険だと思うのは、日本が軍備増強すべきだという声が出てきたこと」とも。その後、取材に応じた。
冷静に、人として向き合う方法を
――今回の侵攻で感じたことは
戦争のすべての被害者に、生き抜いて下さいというメッセージを送りたい。一方、私たちは、戦争をあおらず、熱くならず、できるだけクールに対応しなければいけないと思います。
日本がどうすべきだとかロシアやウクライナがどうあってほしいとか、具体的なことは私には言えません。ただ気になるのは報道が非常に鮮烈なことです。テレビで、『第2次世界大戦後の最も劇的な戦争』『第3次世界大戦のスタート』だと言う人もいました。それはおかしいです。もっと言語に絶する戦争が、ベトナムや中東でありました。
――「核共有の議論を」と、国内の一部政治家が言及しました
一番怖いのは、これを機に日…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル